第1部 第3章 16さい、初めてのパーティー編

第35話 ジュンヤ・イン・ワンダーランド

 数日後、約束していた“ワンダーランド”との共同クエストの日。

 朝には全員集まっていた。

 紳士的な少年が、挨拶とともに、今回のターゲットを発表する。

「おはようございます。早速ですが、本日のターゲットはコボルト20体です」

「え~。20体も~。めんどくさ~い」

 不満を漏らすのは、どことなく猫っぽい少女、チェシャ。こう見えても僧侶である。

「まあ、本日は心強い助っ人が来ているので、心配しなくてもいいと思いますよ」

「あ~。そこの、地味な人ね~。ジュンヤ、だっけ~。よろしく~」

「うん、まぁ、よろしく」

 地味って言われた……。う~ん…………まあいいか。

「ところでアリス。キミは緊張でもしているのですか?顔が真っ赤ですけど。まだ一言もしゃべっていませんし」

 ラビの言葉にビクッとするアリス。

「え、そんなことは……あ、きっと普段とは違うメンバーだから緊張しているんだよ。うん、きっとそう」

「それもそうですね。普段と違うメンバーだと緊張しますよね。正直言って私も少し緊張しています」

 アリスは自分に言い聞かせていた気がするのは気のせいだろうか。

「じゃあ、とりあえず、行きましょう」

 ラビの声にあわせ、身支度をする俺たち。

 そして、俺たちはクエストに旅立った。



 ちょっとずつ虫が増えてきた、北の森。

 そこを歩いて30分。以前キンコツゴブリンがたむろしていた空き地を通り過ぎ、さらに北へ行く。

 さらにしばらく歩いていくと、いつしか山に入っていた。

「さて、もうすぐですよ。やつらは山を越えた先にいます」

 つらい……。疲れた……。持久強化ブースト・スタミナかけてもちょっとつらい。

 やがて、山頂に着いた。

「ふう、やっと山頂につきましたね。ここらでいったん昼食にしましょう」

 ラビの言葉に安堵した。

 やっとご飯が食える。

 省略していたが、ここまでに何回か魔物と出くわして戦っていたのだ。当然傷もついたし魔力も少し使ったし、疲れた。

 昼食は、ラビお手製の弁当。俺を含めた全員の分を用意していた。

 もちろんしっかりと礼を言ってから食べた。美味しかった。

 もう日は高く上っていて、ちょうど真上にあった。

 ラビは全員が食べ終わったことを確認して、声をかけた。

「じゃあ、行きますか」

 それぞれが、「わかった」「うん」「了解」と返事をした。

 そして、来た方とは反対の道を下り始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る