第31話 帰還。

 町の酒場に戻ると、大騒ぎになっていた。式のメインである俺が消えたことにより、大捜索が行われていた。

 正直そこまでになるとは思っていなかった。

 素直に謝罪。そこから先、式は滞りなく進み、最終的に宴会になったところで、俺が助けたパーティーのリーダーと思しき青年が話しかけてきた。

 話を聞くと、彼らは俺の捜索隊として出たパーティーだった。

 謝ると、「いいんですよ」といってくれた。

 そして、森に出かけてすぐにゴブリンに出くわした。しばらく戦っていたが、包囲されてしまい、死に掛けたところで俺が現れたということだった。

「ありがとうございました」

「いえいえ。たまたまそこにいただけですから」

 ほんとに偶然出くわした上に下心がちょっとあったことも否定できない。それで礼を言われるなんてな。

「そうだ。今度、私たちのパーティーでやってみませんか」

「お誘いありがとうございます。今度、お願いします」

 軽いノリで返事をした。


 さあ、宴会だ。誰と話そうか。

 俺は冒険者仲間に酒を注いでもらい、胴上げまでされてすごい上機嫌だった。

 ちなみに、異世界での飲酒は、未成年でも許可されている。しかし、自己責任で、ある程度の常識をわきまえた上でだが。現実世界での未成年の飲酒は、ダメ・ゼッタイであることは言うまでもない。

 暇だ。食べ物も大体食べたし、やることがない。

 もういっそ帰って寝ようかと思ったとき、ちょうど、アリスが「ジュンヤ君」と話しかけてきた。

「え、何?」

 俺は酒によっているのと、少し照れているのとでちょっと顔が赤くなっていたが、アリスは耳の端まで赤く染まっている。

「ね、ねぇ。ちょっと話したいんだけど、いいかな」

 そこで顔が異常なほど赤くなっていることを指摘する。

「うん。いいけど、顔真っ赤だよ」

 しかし、彼女はかわいい微笑を浮かべ、「平気だよ。大丈夫」と答えた。

 そして、話題を変えた。

「それよりも、さっきのすごかった。ありがとう」

「こっちこそ。あの時は君がいないと、死んでたよ。本当にありがとう」

 感謝の言葉を交換した。お互いに本心からである。

 そして、そういえばと思い、このことを報告した。

「あと、今度“ワンダーランド”と一緒にクエストをすることにした」

 ワンダーランドとは、アリスが所属している冒険者パーティーである。

「え、ほんと?嬉しい!」

 アリスははしゃいだかのように言った。

「え?何で」

「わからない。でも、嬉しいんだ」

「そうなんだ。君が喜んでくれて、俺も嬉しいよ」

 その笑顔がめちゃくちゃかわいいんだよな。ああ、眼福っ!

 でもその顔がさっきよりも赤くなって、さらには湯気を吹き出したではないか!

「ところで、ほんとに大丈夫なのか?頭から湯気が出ているけど」

「やばいかも。じゃあ、また今度ね」

 いや、それはそうだろう。

 俺は「うん。お大事に~」と声をかけて立ち去った。

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