三月四日、五日

 四日。

 夢。板張りの長い廊下を歩く。この日本家屋は生家に似ている。右手方向、おそらく南側……のふすまの向こうに六畳間。おおきな障子窓から差してくる光があたたかい。

 なにか伝言があって、だれかを探している。家のなかにはわたししかいないことがわかっている。わたしはいないひと、いなくなったひとを探している。この場所でなら伝えられると知っているので。


 五日。

 庭の金柑きんかんはうえからしたまで食べられた。甘くて美味しいので鳥家族も喜んだろう。畑では、まもなくとう立ちする葉物が楽しみな時期。

 風が吹くと土のぬくもった匂いがする。

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