平成三十一年・春

二月九日、十日

 九日。

 雨のあと、細い道は銀いろにひかる。からすの濡れ羽も銀に波うつ。

 氷のような風が空を渡っていく。地面に近いところでは、川水がすこしゆるんで見える。

 村は冬と春とのあわいにある。ぽこぽこ、ぷくぷく。白と、紅と。梅の花が泡を立てて、そこらじゅうで咲いている。


 十日。

 外出。待ち合わせの相手は貝がら切手のひと。

 人通りのすくない街を歩きつつしゃべりつつ、静かな喫茶店に立ち寄ってはお茶をする。

 木のきしみと、ストーブの温もり。テーブルのうえでは可愛らしい指さきがティーカップをつつんでいる。冬をやわらかくするような半日。

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