一月十八日、十九日

 十八日。

 夢が首根っこをつかんで離してするので、いい加減ねむるのも億劫おっくうになる。

 首から羽の生えた人間と犬と、「この時計は時間が合わないんだ」……、ビーカーと理科机と、……煙草と、窓と白い窓布と、あとなんだったか思い出せない。


 十九日。

 久しぶりに午前の散歩。

 空はつるつるとした青。西の山の寺から木魚の音がする。ぽくぽく、つるつる、ぽくぽくとにぎやかな村。

 氏神さんのところの蝋梅ろうばいはいまが見ごろ。透明な黄いろの花びらが香る。そばを流れる川にはちいさな魚の群れがいる。

 山に登って、貯水池とは反対の道へと足を向ける。日当たりがいいので、菱形ひしがたようのコンクリートかべこけす。

 で、その苔になんの種だか銀の綿毛が点々と、たくさん引っついている。ずっと向こうまで続いている。

 このまま芽吹いて、苔の壁に根を張って、それで銀いろの花でも咲いたら面白いと思う。燐光りんこうがでるので、外灯のないこの道は夜でも歩けるようになる。

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