十月二十八日、二十九日

 二十八日。

 暮れがたは半透明な銀のはくし。そこに金の粉がぱらっと舞う。もし硝子の箱か、虫かごにしまっておけるなら、どんなときも眺めよう。

 原稿を書くのに資料まみれになっている。調べものして新しい世界がひらけるのは、書くことにおけるひとつの薬効と思う。


 二十九日。

 散歩の道、犬を連れたひととおしゃべりをする。もう何度目かでれてきたのか、尻尾しっぽくるんの犬が飛びついて、挨拶あいさつをしてくれる。可愛い、かわいい。

 月の始めに舞台でいただいた花がドライになったのでかざる。いま棚のうえは、味のある、くすんだ草花、あざやかなだいだいのかぼちゃ、くぬぎの実、写真にして紅葉の山のすそ、……そんなものでいっぱい。

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