五月十六日

 暑いあついとばかりも言っていられないので、れいはじめとして寒天かんてんを作る。白玉、きな粉、黒蜜くろみつ果物くだもの、なにとあわせても美味しい。

 もう少しすれば赤じそのジュースもできる。これらは祖母から教わった味。


 なんとなく生家を思いだす。庭にむかう縁側。朝も夜も子どものひざが並んで、西瓜と花火のにおい。……

 ある一日わたしは、ひんやりとした庭石のかげに座りこんでいた。そこは緑の隠れ家だった。また青く、赤く、白くもあった。リュウノヒゲ、カエデ、なつ茱萸ぐみ、ハクモクレン。よじ登れるような、名前も知らない木。

 好きなものはなんでもあった。へいかしのところから、よその棚田が見えていた。……


 ぼうきょうけっしょう。思いでは結晶化して、きらり、きらりとれいなもの。

 つなぐようにつづる。いつの間にか、わたしのなかにはかえれる庭が生息いきていた。

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