五月八日

 雨。道のシャクヤクが、くったりとうつむいている。ヤマボウシらしき花が菱形ひしがたに咲く。散歩に出たい気持ちだけれど風が悪くてす。


 以下、四月四日付の走り書きより。


 窓布まどぬのって、しろい月あかりがしこんでくる。これは天からのはしだ。夜のこどもたちがくるのだ。

 わたしは、つとめて寝たふりを続けなければならない。こどもたちが金のがちょうのお話や、鉄道てつどうせん木蓮もくれんあたりのうわさをしても。

 わたしがつとめて寝ているあいだ、こどもたちはあちらのたな抽斗ひきだしのうち、鉱石こうせきや、ぼたんや貝やがしまわれている、宝の段を見つけるだろう。そしてみんなでかじるだろう。こどもにはそういうものが、なによりとっておきだから。

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