五月二日

 朝。ちょっとこい、ちょっとこい。コジュケイがあんまり呼ぶので散歩にでる。

 大きくて首の長い鳥が三羽して飛んでいく。この頃よく見かけるけれどサギだろうか。あいさつわすように鳴いていた。


 沢にかにたち。涼しいので元気が出て西の山へと向かう。先日話しかけた竹林のれいじゅう、もとい、たけのこは地面に近いほうから皮がけてきて、真新しい緑の身をさらしている。

 道を上がっていくとほおの木が目立って映る。天を向く広い花。木霊こだまでも乗せて浮かんでいけそうな余裕がある。

 ちいさく白く、ふわふわしているのは、シモツケかなにか。この時期はサンザシだのカマツカだの、似たようなバラ科の花が咲くので見分けられない。


 桜とくわとが実を結んでいる。そばの木にはオトシブミが作ったらしい揺籃ようらんがいくつもある。これは細やかな、みどりごのための知恵。

 さらに登ると頂上。うぐいすの得意げな歌ごえが届く。コジュケイはどこへ行ったのだろう。あんなに用ありげだったのに。

 貯水池にはもう釣り人がいる。落ちはじめたウツギの花と、やわらかな葉に包まれたカエデが道をつくっている。……

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