四月十七日

 草臥くたびれることのない庭。季節の舞台はにぎやかにある。

 世話師、庭師。ひと草、ひと花に、あれほど生をくれるとは、さては名のある魔法使いか。そうしてでる想いを魔力と呼ぶならば。


 水仙の咲ききった道。石垣からあふれていた芝桜にかわって、喇叭口らっぱぐちのつつじが並ぶ。思い出にある甘い蜜のにおい。

 ちいさなアヤメであるシャガは、「胡蝶花」と書くほうが似合う。春のざしをひとりかかえたような山吹。八重咲きも。

 まりは遠目に、枝からさがる小ぶりの紫陽花にも見える。近づけば可憐な木精こだまの隠れ家か。

 ひたいのうえに藤。白ととりどり。まだ見あげればハナミズキ。さらにうえにはしきこいが、はやばやと泳いでいる。


 びんめにしていた柑橘かんきつがいい具合になった。朝晩と肌寒いとき、湯で割って飲む。暑くなる日中には冷えた炭酸割り。

 これを書いていて思いだした、去年の秋に木瓜ぼけしゅをつくったのだった。もう半年漬けてある。

 様子を見る。美味しそうなはくいろが染みだしている。ゆっくりと瓶をする。けてひかる。

 いかにも飲んでほしそうなのだけれども、こらえて棚深くくことにする。いま禁酒中なので。

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