第17話 新たな幕開け
「さて、長い訓練期間を経て諸君らは優秀なパイロットに育った。現に今のまま戦場に放り出されても戦えるだけの技量を君たちは持っている…… 」
流石のフォックスも70人全員が訓練を修了させられた事が嬉しいらしく、いつもより訓示が長い。ユリの一件といい、界人はフォックスめ言葉一つ一つが重く感じた。
「さて、明日からの実戦配備に伴い『小隊発表』をこの場で行う! 」
場の空気が一気に張り詰める。誰と組み、どのような小隊になるのかは大きな意味を持つ。戦場では小隊こそが信頼に足る存在であり、命を懸けるにふさわしいメンバーでなければ意味がない。
「では順番に発表するぞ……第1小隊、4番、23番、35番! 」
次々とメンバーが発表されていく。そして最後の小隊が読み上げられた。
「第23小隊、19番、43番、57番!以上! 」
なんと、界人は最後の最後まで呼ばれなかった。そのことに気付いた周りもざわつくが、フォックスの「静粛に」の一声ですぐに収まった。
「解散後は小隊ごとにギアの格納庫に向かい、整備課の担当スタッフと調整を行え。諸君の奮闘を期待する。あと、玄田候補生は解散後教官室へ来い。以上、諸君らの奮闘を期待する!! 」
フォックスの訓示が終了し、各自小隊ごとに集合するのを尻目に、界人はブリーフィングルームを後にした。
「それで、私への用件は何でしょうか? 」
教官室にてフォックスと向かい合う界人。正直納得している訳ではなかった。
「それでは、君への特別任務を発表しよう」
「え、あ、はい! 」
唐突過ぎる辞表に驚きつつも、界人は気をつけの姿勢を取る。
「本部命令、玄田 界人候補生。貴官には『特務小隊』への配属を命じる」
「はっ、慎んでお受けします」
一礼し次の指示を待つも、フォックスはニヤニヤしたまま何も言わない。
「あの、教官? 」
「……さて、ようこそ新人。特務小隊配属の感想を聞こうか? 」
全く意味が理解できなかった。界人の目が点になる。
「あの、それはどういう…… 」
「おぉ、連絡を忘れていたか。これは失敬」
まるで忘れていました、とフォックスがオーバー気味に動く。
「俺が特務小隊隊長、フォックス=J=ヴァレンタインだ。こっちは小隊員のレオン=アリシア」
「え……えェ!! 」
まさかの配属である。界人自身、フォックスの腕を認めいつか追い抜いてやると努力しているため、フォックスの近くにいられることを嬉しく思っていた。
「さて、特務小隊員には戦術評価中の最新機が用意される事になっとる。早速見に行こうか」
「は、はい! 」
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ギア紹介:MM-501『レイヴン』
PNG-0δ『ゼロ』のデータを基に造られた第五世ギアの先行量産型。たった二戦分のデータだけとはいえ合計27機も仕留めているため、十分過ぎるデータ量だったと開発チームは語っている。
複合装甲の改良やフレームのデチューンを施し、コストを下げつつゼロの85%のパフォーマンスを実現させたオーパーツ的なギアである。
今回配備されたのは二機で、一号機はレオン用の格闘カスタマー機、二号機は界人用の射撃カスタム機となっている。
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