第14話 『才能』と『実力』
フィリップの命令により、最上階のブリーフィングルームに候補生が集められた。重要な連絡ということで、緊急召集のコールが鳴り響いた。
「こんな時間に何の用だよ? 」
「単なる集合動作の演習だったりして? 」
候補生たちはそれほど大きな事だた受け取っていないらしい。しかし、一人だけ何かに感付いた者がいる。
「……あの男か? 」
玄田くろだ 界人かいと。名前も知らない中年男性に無様に投げられた事が相当悔しいのか、この状況下でもあの男の顔が忘れられないらしい。
「まっさかぁ、界人の考えすぎだろ?」
そうこうしてるうちにフィリップがやってくる。
「全員集まったか?それではミーティングを始める」
全員の目線が自分に集まったことを確認し、フィリップは話を続ける。
「まず明日からの訓練についてだが、いよいよ大詰めの実践に突入する。そこで新しい教官の紹介を行う」
フィリップの発言が終わると同時に三人組がルームに入ってくる。その場にいた誰もがその三人組の顔を見て仰天した。
「え!?何でこの人が…… 」
異口同音にこの台詞が飛び出る。すぐに静まったが、候補生たち動揺は収まらない。まずはフォックスが前に出る。
「まず自己紹介な。俺の名前はフォックス=J=ヴァレンタイン、今日から君らの教官となる」
ざわめきが大きくなるも、フォックスが睨み付けると候補生たちは静かさを取り戻した。
「まず書類上からの観点と先程のどんちゃん騒ぎを比較するに、君らには確かな『能力』はあると推測できる」
ここまでを聞いて喜ぶ者もいれば不服そうな顔をする者もいる。フォックスの話は止まらない。
「しかし今の君らに戦場でスコアを稼ぐだけの『実力』があるとは思わない。そこは履き違えないでほしい」
ここまできてやっと全員が黙った。もちろんフォックスの話に感動したのではなく、自分たちの訓練の成果を批判された憤りからである。
「よってこれからはより実践的な訓練を行うからそのつもりでいてくれ。一層の努力を期待する。以上!! 」
突然の大声に全員が揃って起立した。一礼した後、レオンが前に立つ。
「君らの格闘を主に教練することになるレオン=アリシアだ。私からは一つ、あのような子供の喧嘩は格闘とは見なさんからそのつもりでいろ、以上だ」
フィリップがユリを連れて前に出る。
「そして、教官の専用機の整備メンバーとしてこのユリ君が新たに加わる。以上で顔会わせを終了する。解散!! 」
界人は納得がいかなかった。あのような男に技術を教わるのはごめんだ、とただそれだけの思いが渦巻いていた。
「教官、私はあんな男に教わる気はありません!何故今更になって新しい教官などを招くんですか!! 」
狭い教官室に界人の大声が響き渡る。フィリップは面倒臭そうな顔で界人を見上げる。
「あの人は私の教官であり、『Hive』のパイロットチーフだ。ゆくゆくは貴様の上司なのだから別に構わんだろう? 」
「私は、あのようないかにもパイロットに見えない男に習いたくないんですよ!! 」
「そうか、ならこれを見たまえ」
そう言うと、フィリップは一冊のファイルを取り出し、机に置いた。界人は渋々そのファイルを手に取り中身を確認した。すると瞬く間に目の色が変わっていく。
「これが……あの人の…… 」
「そうだ。分かったならもう良いか? 」
「……はい。失礼しました 」
教官室を後にした界人の胸の内には一つの目標が出来ていた。
「あの人を越えてやる……待ってろよ、『戦場の悪魔』!! 」
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設定詳細その1:ギアの重量
ギアの重量に関しては、水道橋重工様の『クラタス』のデータを参考にしています。
クラタスの大きさは体長4m、重量4tです。もし体長を10m、つまり2.5倍にした場合重量は4×2.5×2.5×2.5=62.5ですので、ギアの適性重量は62.5tが正解です。
ここから400年に渡る材質の改良、パーツの軽量化を加えるとおおよそ本体重量40t前後だと算出しています。武器の重さ等も含めますと恐らく60tオーバーとなり、軽すぎることも重すぎることもないかと思っています。
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