第42話 『元祖』その7

「いま、あなたがた、『うんじゃあ まいや らあにこ』って、いいましたか?」


 キューさんが尋ねました。


「うん。だってそうだもん。」


「そうそう。それが、『秘密の呪文』なんだって聞いてた。そしたら、今回91階の主さまのお言葉から、「うんじゃあ まいやら なんのことやらあ~~~~~」が出て来たから、びっくししたんだよね。」


「びっくし?」


「そうそう。びっくし。だって、この階のあたりでは、『うんじゃあ まいや ラーにこ』が秘密の呪文で、あっちこっちで、これ言うと5%引きセールになるんです。」


「3階までよね。」


「そうそう。その先には広がってないみたい。」


「ああ、それは、どこから情報が来るの?」


 キューさんです。


「どこからって・・・いろいろ、ね。」


「決まってはいません。あっちこっち、友達だったり、うわさだったり、でも、呪文が効く店には、決められたマークがレジに付いてるんだ。」


「マーク、ですか?」


「うん。金平糖マーク。ね、」


「そうそう。」


「ほう・・・・・そりゃあ、気が付かなかったぞなあ。」


 スワンが言いました。


「なるほど。で、そのラーメン屋さんでは、特別なラーメンが出てくる。別室で?」


「そうそう。だけど、そのための呪文は、少し違っているらしいんだ。」


「違っている?」


「うん。さっきのだと5%引きまで。でも、特別ラーメンの注文は、もうちょっと違うらしいんだけど、そこの情報が分からなくて。」


「こわいしね。」


「そうそう。なんか、その先はちょっと怖いから。」


「食べに行ったことはあるんですね。」


「はい。おいしいですよ。普通に美味しい。ここと比べても、勝ってる。でも、ちょっと雰囲気特殊。ね。」


「うん。気味悪いところはあるなあ。やっぱし。」


「ほう・・・・その、呪文の全体って、どこにゆけばわかるのですのかなね?」


「そこが、わかんないの。きゃははははははは。」


「はあ・・・・・・」



 **********   **********



 そのころ、上層階では、すでに信じがたい事態が発生していたのですが、ここらあたりは、まだ普段のままでした。


 女子高校生たちは、きゃーきゃー言いながら、他の場所に移動してゆきました。


「なんか、よくわからないぞなもし。」


「そうさねえ。まあ、今時の子の言う事だからねぇ。」


 スワンとお嬢が言いました。


「その店を、張り込むね。きっと、なにか出てくる。実は、その場所は、ぼくの情報感覚が届かない場所なのね。」


「へぇ~~~! なんでまた。」


「もともと、普通のお店の場所じゃあなかった、ってことですね。何かの事務所とか、個人の棲み処だったとか。」


「はあ~~~?」


「でも、場所が分かったからね、もう、対処の方法があるからね。行って見ましょう。」


 キューさんが、言いました。



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