第41話 『元祖』 その6
職員用のエレベーターは、さらに危険になったと見たぼくたちは、階段で一気に1階に降りて行きました。
しかし、相手もやすやすとは見過ごしません。
モール付きの警備員がさっそく、襲ってきます。
しかし、どうやらぼくたちを殺害する気はないらしくて、捕獲するように指示が出ていたようなのです。
まあ、どっちにしても、ぼくらは、キューさんのものすごいスピードの戦闘力に圧倒されるばかりでしたが。
ばったばったとロボット警備員を破壊して、ぼくらはすぐに1階にたどり着きました。
『全館閉鎖』という事態にもかかわらず、ほとんどの店舗は、あいかわらず営業を続けています。
ここらあたりが、このモールのいかにも興味深いところで、『1年365日、閉店なし!』が最大の売りであるこの巨大モールの真骨頂なのでした。
人間たちは、非常に大人しくなるように、ロボットさんたちに子供のころから教育されて来ていますが、現在ここでは、ぼくのまいた種のおかげで、ロボットに対して好戦的になっております。
そこで、あちこちで、ロボット警備員さんが、来店者に取り巻かれて、袋叩きに会っている光景が見られたのです。
ここの警備ロボットは、人間を殺害するという、動機を与えられてはいません。
違反者や犯罪者は、捕獲するだけです。
逮捕は、通常は中央警察の地元出先署のロボット警察官の役割です。
しかし、モール常駐の警察官ロボットの数は、非常に少なかったのでした。
彼らは、先にご紹介したように少し強力なビーム銃を所持していましたが、殺人までは不可能でした。
多勢に無勢です。
とはいえ、中央から来たエリート警察群団は、ちょっと話が違っていました。
強力な武器を所持しています。
上から入ってきた精鋭警察官は、上層階からどんどんと制圧をしてきていたのです。
それは、キューさんからの情報で、よくわかっておりました。
「ぼくらの居場所は、わかってるんだろうに。」
ぼくが言いました。
「はいですね。でも、はっきり言って、あまりあなた個人は重要視されてないね。」
「まあ、そりゃあ、そうだろう、お飾りだもの。」
「彼らの狙いは、他にありですね。」
「だれ?」
「そりゃあもう、『神様』ですよ。」
「え? 地主さんは、ロボット政府から見ても行方不明なのかい?」
「あたりまえですよ。害はないと見て来ていたが、ここで、見方を修正したのでしょう。」
「ふうん・・・・・そうなのかなあ・・・・・」
「何か喉にひっかかってますね。」
「うん。最上階の上の、謎の領域のことだよ。いったい、なんなのだろうか?」
「さあて、あそこは、ぼくにも全く見えない、人間たちにはもちろん、何もわからない。はっきり言って、ロボット政府が知ってるのかどうかも、あやしいんですね。」
「はあ????」
「まあ、そのあたりは、またあとからね。」
ぼくたちは、1階のとある喫茶室に入り込みました。
「なんか、すっごいあけっぴろげな・・・・」
適当な席に着きながら、ぼくが言いました。
女子高生らしき3人が、おおきなソフトクリームをなめています。
そこに、追加で、らーめんがきました。
「だからいいのです。あ、すみません、ロボット用のババヌッッキジュースね。」
キューさんは、店員さんをつかまえていいました。
「みなさんは?」
「ああ、では、ぼくはオレンジジュース。砂糖なし。」
「じゃ。コーシーぞな。」
「コーヒーだろ。あんた。ええと、じゃああたしは、ウインナコーヒー。」
「はい・・・・」
その店員さんはロボットさんでしたが、首のランプが急回転しています。
となりの席にいた、その人間の女子高校生らしきひとり・・・が、こっちを見ながら言いました。
「あああ~~~~! 91階の『主様』だあ、『うん、じゃあ まいやらあ~にこ!』主様あ! なんのことやらあ、頑張ってくださあい。応援してます。」
「え????あ、ども。あれ?」
と、ぼくがちょっと戸惑ったように、答えました。
な、なんか、替わった呪文を言ったぞ~~~。
「彼女たちは、呪文の言葉を、会話に適度に融合させる天才ですね。おもしろい。興味深い。」
キューさんが言いました。
彼が、ひき続き、あたりも厳しく監視していることは、明白ですが、やはりこの呪文に注目したのは、間違いありません。
「でさあ・・・・ここのラーメンもすっごくいいね。ああ、うまい!」
「ふんふん・・・あ、でもね、ラーメンならば。あんた、知ってる? あの2階の隠れラーメン店」
「隠れラーメン店・・・って、『麺海坊主』のこと?」
「そうそう。」
「普通のラ-メンやさんじゃんか。」
「それが、あそには、謎の裏メニューがあるんだって。」
「へえ~~~!?」
「なんでも、秘密の呪文を言うと、豪華な裏部屋に案内されて、まずは、秘密の儀式を受けるんだってさ。」
「ええ~~~! こあ~~~!!!」
「それでさ、そうすると、秘密の会員になれて、秘密のラーメンが食べられるようになるんだって。それがまた、天国的うまさなんだってさあ~~~。」
「なんだ、それだけ?」
「まあ、『ロボット政府反対の秘密結社組織』の『会員』にされるらしいよ。でも、それですぐどうなるわけじゃないらしいけど。でも、それで、『神様』にぐっと近くなるって、そうしたら、やがて、『天国』にも案内されることになるらしいって。」
「ちっとも、『秘密』になってないじゃん、それに、下手したらさあ、殺されてるんじゃんか!!」
「ちがうちがう・・・『天国』と言うのは、このモールの上に載っかっている、別世界の事よ。」
「なぬ・・・・・・」
ぼくらは、彼女たちの会話に、耳をそばだてました。
「まさかあ。屋上の上の、その謎の世界の事は良く聞くけどさあ、実は誰も知らないというのが、本当らしいよ。おかしな作り話なんじゃない?」
「ううん。そうでもないらしいよ。『神様』が、どうも、実は最近はそこに行ってるんだ、という、噂があるらしいよ・・・・噂の出所は、そのお店の会員さんかららしい。」
「へえ~~~~。」
「ちょっと、あなた方。」
キューさんが声を掛けました。
「はあーい。『主様』の、一の家来さん。」
「ずわ!・・・・ああ、はい・・・・、まあ、そうですね・・・。あの、その話ですが・・・もうちょっと詳しく教えてくださいませんか?」
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