第33話 『革命』 その14

 『集会』の『会衆』も、ガスの影響で頭がすっきりしていないのでしょうけれど、こっちも、あたかも薄氷を踏む思いです。


 なんだか、キツネとタヌキのばかしあいみたいな感じになりました。


 どっちも真実を知らないとなれば、まあ、そうなりますよね。

 

 でも、実は、この時、モール全体が、合掌の輪に加わっていたのです。



「うんじゃー まいやら  うんじゃー まいやら  うんじゃーまいやら・・・・・」


「どうやら呪文に、新しいフレーズを書き加えたら、よさそうですね。『なんのことやら』とか。」


「は?」


 キューさんが言いましたが、実はキューさんは、モールの中がどうなっているのか、あとから考えてみれば、その時点で知っていたはずなわけです。


 ぼくは、その当たりまえのことを、完全に見落としていました。


「かんべんしてくださいよお~!」


 しかし、こうなると、中央警察も、ついに本腰を入れざるを得なくなるのは、当然のことだったのです。


 これまでは、いささかふざけた『問題引退者』だったぼくが、俄然、『危険人間』にレベルアップしたことは、言うまでもありません。



  *****   *****



 なにがなんだか、結局はよくわからないうちに、集会はクライマックスに達しました。


 つまりこれこそが、集会の真の目的なのですから。


 それは、91階でも、行われたことです。


 その時の生贄は、キューさん自身だったわけです。


 ぼくたちの目の前に、意識不明のロボットが運ばれてきました。


 あのときの、キューさんと同じ状態でしょう。


 しかしながら、かわいそうなことに、ここでは助けが入りません。


 キューさんは、それが出来たのでしょうし、ぼくにも可能だったに違いないです。


 しかし、いま、この状態では、手は出せないだろうと、ぼくは考えていました。


 まあ、実際、キューさんも、手を出さなかったのです。


「始めよ!」


 司祭の合図によって、壮絶な光景が、繰り広げられたのであります。


 会衆は、手に手に、ハンマーとか、ドライバーとか、金属ばさみとか、木製の小鎚とか、はんだごてとか、ペンチとか、包丁とか、ナイフとか、のこぎりとか、とにかく、身の周りにある、さまざまな凶器になりうるすべてのものを、ここにもち込んで来ていたのです。


 それから、壮絶な、ロボットさんの破壊が行われました。


 人々が普段感じ、ため込んでいた、ロボットに対するうっぷんが、一気に放出された感じなのです。


 もう、細かい部品のひとつひとつまでもが分解されて、バラバラにされたのでした。


 その、若い女性のロボットさんは、人体に非常に巧妙に似せて作られておりましたが、跡形もなく、粉砕されたのです。


「このロボットは、民生用で、作りが緩いからね。」


 キューさんが、顔色一つ変えず、あっさりと言いました。(変わるわけないけど。)


「おわ~~! 人類に敵なし!」


「人類に敵なし!!」


 人々が叫びました。


 それからまた、あの呪文が、延々と始まったのです。


   

  ************   ************



 

 

















 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る