『巨大モール難民』

やましん(テンパー)

第1話 『巨大モール』

 それは、広大なものだったのです。


 敷地の面積は、東京ドームの10倍。


 建物の敷地面積はその半分あり、残りは駐車場や公園になっておりました。


 建物自体たるや、地上150階建てで、バベルの塔さんも真っ青になって逃げだすくらいのものだったのです。


 新開発の特殊な建築技法が使われていて、建物は事実上、空中に浮いている状態だったので、地震の影響も全く受けません。倒れる可能性はほぼゼロで、夢のようなショッピングセンターでした。


 だから、巨大地震が起こった時には、当然ここが避難場所に指定されておりました。


 おまけに、入居店舗の85%は24時間営業ということで、残りは、医療クリニックとか、役所の出先機関とか、保険会社とか、そうしたものでした。


 従業員の半数はロボット店員だったのも、大きな特徴です。


 清算も、お金を使わない方法が主体で、かなり合理化されておりました。


 そこで、ここで楽しくお買い物できるためには、それなりの準備がある方々である必要がある、はずだったのです。


 ところが、当初想定されていなかった使用方法を、人々はすぐに見つけ出しました。


 何かの事情で失業したり、仕事に行くことが出来なくなったり、おうちから追い出されていたり、自分から出て行ったり、。。。


 まあ、とにかくお家にいられなくなった人々・・・『難民』の皆さん方のよい避難先となったのです。


 基本的に、どなたが入っても良い場所です。


 『難民』だからと言って、追放することは出来ないはずです。


 まあ、かく言うぼくも、『準難民』でしたけど。



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