ボクの片思い日記

風見☆渚

第1話 学校帰り

学校から帰宅し、見慣れた玄関のドアを開けた。

がちゃ。

なんとなく予想はしていたけど、そこにはロングスカートを床に広げたメイド姿の彩乃さんが、三つ指立ててボクを出迎えた。


「ぼっちゃま、お帰りなさいませ。

おやつにしますか?

お風呂にしますか?

それとも・・・

わたし、なんて絶対あり得ないですよね・・・

だって、私のようにみすぼらしい貧乏人を欲するなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないことですし、ましてやお金持ちのぼっちゃまが私のような女性に1μでも気持ちが揺らぐ可能性すらないのに、私はいったいなんてことを口走ってしまったのでしょうか。

この罪は、どうあがなえばよろしいでしょうか。

そうですね。そですよね。これは死んでお詫びをするしかないですよね。

でも、私の死体をぼっちゃんの前に晒すなんて、それこそ罪深い行為そのもの。

あーーーー私はいったいどしたら良いのでしょうか!!!」


「いや、普通におやつ食べたいな。」


「は、そうですね。そうでしたね。

学校から帰ったぼっちゃんのために、全身全霊を注いでクッキーを焼いてみたのですが、お口にあいますでしょうか。

もし気に入らなければ、ゴミとして捨てて頂いて結構です。

もちろん、生ゴミ以下の私も捨てて・・・

あーーーどうか捨てないでください!!!」


家政婦の彩乃さんは、家庭の事情に問題があったために苦労続きだったらしく、高校を卒業したと同時に今の仕事を始めた社会人1年生。

昔から苦労が絶えなかった彩乃さんは、高校時代もバイトを何個も掛け持ちしていたが、この性格が問題なのか、どの職場も長続きしなかったと聞いたことがある。

性格は少し大げさだけど、根は優しくて真面目でボクのことをすごく考えてくれていることは伝わってくる。

今の仕事は、前まで来てくれていた家政婦さんの口利きでなんとか就職先として決めることが出来たからなのか、過剰なほど毎日頑張ってくれている。


黙っていれば誰もがうらやむ美少女の彩乃さんは、いつもネガティブ全開で仕事に励んでいる。

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