僕は黒の軍師李儒! 前世の悪事の為に責任をとらされています……
かず斉入道
第1話 悪夢(1)
「助けて、助けて」と。
今日も僕が瞼を閉じ、睡眠に入ると。
こんな声、台詞──。
それも若い女性の悲痛な声音での嘆願……。
いや、命乞いかな?
だって若い女性……。
それも中華、香港の古代、中世の映画……。
そう、僕が大変に大好きな時代、秦の始皇帝が大中華を統一した時代や。
その後の、項羽と劉邦の天下をかけた竜虎の時代……。
そして、後漢と呼ばれた時代から三國志、晋の時代へと移り変わる頃の、後宮ドレスを身に纏う、麗しい女性が何故か男に。
自身の華奢首を力強く握り締められ、悲痛な表情、声を漏らす姿が。
僕の脳内に、白黒映画を観るような感じで、ぼんやりと映る。
だから僕は、女優さんのように美しい
(うわぁっ! 可哀想だな!)と。
(
いつも思えばね。
その男は、美しい女性の首を力強く締めながら、グイグイと押していくのだよ。
女性が悲痛な表情で「うごッ、おげッ、うぐッ」と、声にならない台詞……。
そう、彼女が何を言っているのか、本来ならば悟ることができない台詞を僕は何故か?
彼女が男に対して悲痛な表情で、自身の命乞いをしているのがわかる。
だから不思議だな?
何故だろう? と。
僕は思いつつ。
見たくもない光景をY〇u Tubeやイ〇スタ〇ラム、T〇k Tokの動画を観るように見詰め続けている。
僕自身も何故だかわからないけれど。
僕自身、女性の首を絞める謎の男の背と。
その男に首を絞められているがために。
自身の顔が真っ青になり。
本当ならば麗しいはずの、女性の顔がね、苦しさの余り段々と歪んだ顔へと変貌しつつ、二人は歩き続けている。
すると彼女の背は、石でできた城壁らしき物に当たり。
そこで彼と彼女の足の方は止まる。
でも男の方は、それでも麗しい女性の首を無言で絞めつつ。
今度は彼女の身体を城壁から落とそうと試み始めるのが、僕の瞳に映るから。
(あいつ! あの男! まさか、女性を塀から落とすつもりなのか?)と。
僕は思うと。
(あの男は人でなしだ! 碌な人間じゃない! 悪者! 悪人だ! 警察に捕まり、死刑になればいいのに!)と。
僕はいつも大変に過激なことを思えば。
「李儒、お願い……。朕を。朕のことを助けてください。貴方と董卓の申し入れは何でも従いますから。朕と陛下の命だけは盗らないでお願い。お願いします」と。
男……。
李儒と言う名の男に女性は、自身の顔が歪むほど首を絞められているのも関わらず。
何故か声がでる。
それも彼女は、涙をポロポロ流しつつ、自身の首を絞める、男ではなく。
何故か僕の顔を……。
そう、夢の中でしか見ることが叶わぬはずの、女性のはずなのに。
彼女は僕の顔を見詰めつつ、命乞いを続けてくる。
それも、この恐ろしい夢を僕が見る度に、彼女はいつも命乞いを続けてくる。
僕が夢の中で、自身の両耳を塞ごうが。
彼女は僕への嘆願を辞めてはくれない。
「助けて、李儒、お願い」
「お願いします、李儒」
「朕と幼い陛下を助けてください」と。
彼女は何故か血の涙を流しつつ、何度も命乞いをしてくるから。
僕は困って仕方がない。
まあ、ないからね。
「僕に、そんな嘆願をしてもらっても困るから。貴女の首を絞める男に嘆願をしてみたら、どうですか?」と。
僕は自身の耳を押さえ、首を振りつつ、彼女に告げるのだけれど。
「うぅ、うううっ。だから貴方に! 貴方に嘆願をしているではないですか、李儒……。うぅ、うううっ」と。
彼女は、自身の首を絞める男ではなく、僕に手を差し伸べてくる。
それも呻り声を漏らしつつ、『助けてください』と命乞いをしてくるから。
僕は「知らない! 知らない! 僕は貴女なんか知らない! 知らないよ! 僕のことを貴方は誰かと勘違いをしているだけだよ! だから僕に命乞いをしないでお願いだよ」と。
僕は自身の首を振りつつ絶叫! 奇声交じりで彼女へと説明と嘆願をいつも、この悪夢を見る度に。
僕は最後には涙を流しつつ彼女に!
何太后閣下に嘆願をする。
(2)
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