第268話 【終焉】李儒(理樹)と内気な姫殿下(2)

 だから李儒理樹自身も。


「弁、ありがとう」


 そして!


「弁もレベルアップおめでとう。心から祝福するよ」と。


 李儒理樹が自身の女神さまへと、笑みを浮かべ祝福の言葉を呟けば。


「うふっ。ありがとう。あなた。これでわらわも以前よりも色々な魔法が使える。使用できるようになりました。ふっ、ふふっ」と。


 弁姫殿下は相変わらず李儒理樹へと女神の、高貴な、やんごとなき微笑みをくれる。


 だから李儒理樹も、そんな彼女の様子をみれば、多少なりとも心が和むから。


「だね。これで僕も以前よりかは、少しは真面に戦えるよ」と。


 弁姫殿下の女神の笑みに応えるように彼も微笑んでみせるのだが。


 でも、李儒理樹は、しかし!


 しかしだなのだ!


 だって彼を、李儒理樹の事を只元自分のゲームでの主……。



 そう、彼が以前プレイをしていた【三國オンライン戦記】、この世界での主だったと言うだけで、李儒理樹を守り、盾となってデリート、消去、消えてしまった袁術お嬢さまの純情、純愛。


 彼、主、夫に対して懸命、命懸けで奉公、尽くしてくれた事……。



 そして、主君に対して、気だるげに話す、会話をする割には彼女、紀霊将軍の最後まで主君である袁術嬢への忠義を貫き通して散った。


 そう、李儒理樹の目、瞳の先で、桜の花びらのように美しく、可憐に散った戦姫二人……。



 ツンデレ、縦ロールが良く似合うお嬢さまの、袁術嬢と三尖刀を振るう怪力戦姫、紀霊将軍の事……。



 あの時の二人の、桜の花びらのように散り行く様、様子を思い出せば、李儒理樹の瞼、瞳、目尻は自然と熱くなる。


 だから彼は俯き、暗い影を落とす。


「……ん? どうした婿殿?」


「……何かあったの、理君?」




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