第236話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【反撃】(7)

 だから悲しみに耽ないで、落ち込まないで、顔をあげて二人とも。私達は迄生きているのですから。明るく、元気にいきましょう。李儒(理樹)殿、弁姫殿下……と、でも言いたい。申したい様子。明るく、笑みを。天使の笑みを浮かべながら。


 今迄、自身の額、頬に、冷や汗をかき、垂らしながら。


 李儒(理樹)と弁姫殿下の眼下で、自身の頭を深々と何度も下げながら土下座を繰り返していた于禁が、自身の顔を上げ、気落ち、落胆。悲しみに耽る二人へと明るく告げてきた。


 ……だけではないのだ。于禁の言葉、台詞は。


「……ほらね、弁姫殿下。李儒(理樹)殿。我等の仲間達が更に増えましたよ。だからしっかりしてください。二人共」と。


 明るく于禁が呟けば。


「──撃てぇえええっ!」と。


「「「キャァアアアッ!」」」


「「「ピキィー!」」」


「「「クエェ、エエエッ!」」」と。


 少女の甲高い声音での下知、指示──!


 それに呼応するようにおチビな埴輪の兵士達数百の甲高い。威勢のある声が、下を向く二人。李儒(理樹)と弁姫殿下の耳へと地鳴りのように轟き、響かせながら聞こえてきた。


 だから二人は仲良く頭を上げ、顔を見合わせると。


「……やっと、来たか。遅い。遅いぞ。曹仁。もう少し早く来い」と。


 俺戦姫さま、夏候惇が只今下知──。自身が率いる埴輪仕様の弩隊へと、巨人兵への攻撃を支持した。魏の覇王曹操孟徳の妹君である曹仁へと苦笑いを漏らしながら不満を漏らせば。


「突撃ー!」


「──てめぇらぁっ! 行くぞぉっ! 突撃だぁあああっ!」と。


「「「ピキィー!」」」


「「「キャァアアアッ!」」」


「「「クエェ、エエエッ!」」」と。


 今度は曹操孟徳の従妹である曹洪。そして臣下の、悪来典韋の二人が、自身の率いるおチビな埴輪の騎兵隊達数百を引き連れたまま、各自が。魔法スキル【鋒矢】を発動──。


 自身が率いる埴輪仕様と木馬の騎兵隊達と共に真っ赤に染まり。一つの弾丸、砲弾のように、素早く。勢い良く。埴輪の巨人兵の両足へと仲良く、左右に、【鋒矢】騎馬突撃を決行するのだ。


〈ドォオオオン!〉


〈ガァアアアン!〉


『グラリ』、『ヨロヨロ』と。


〈ドン!〉


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