第194話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【魔物】(5)
そう、自身の主李儒(理樹)の腹部の下へと、忍ばせて触れ戯れていた華奢で、しなやかな掌、指先で、ギュッと力強く握る。握るから。
「ギャン!」、
「うぎゃ、あああっ!」、
「痛い!」と、李儒(理樹)の顔色が変わり絶叫──!
でも女神さまは、己の主が絶叫を漏らそうがお構いなしだ。李儒(理樹)の部屋で、ベッド、横たわり雑誌を、女性雑誌を見て、読みながら。「早くしなさい。あなた~。何を手休めしているのですか~? わらわの身体中をマッサージ。腰を揉みなさい~。わらわは疲れて仕方がないのですから~」と。
まさに女王さま、太后さま、妃さまらしい振る舞いで平然と、主、李儒(理樹)に悪態をついてみせる様子と同じことを、この場でしてみせたのだ。
だから彼女、女神さま……。
まあ、李儒(理樹)は、この女神さまが誰なのかを知らないまま、己のハーレム王となるためのパーティーメンバーに加えたようだが。この話し。この物語をここまで視聴、読んできた者達には、この麗しいエルフな女神さま。内気な姫さまが誰なのかは、安易に想像できたと思うけれど。それでも女神さまの急変ぶりには、皆も少々困惑をしたとは思うのだが。
いくら大人しく、奥ゆかしい女性、少女、乙女だったとしても、己の全部を捧げた主、夫……だけではないか? 他人に対しての接し方も急変するのはよくあること。
そう、未だ深い異性との付き合い。結婚の経験の無い読者の若き少年達にはわからない。理解ができないと思うのだが?
自身の家、里、実家の母、母君、お母ちゃん達の夫への接し方を、回想シーンとして思い出せばわかる通りだ。
それに? 君達のお父ちゃんが、威勢の良い。荒々しい主婦。お母ちゃん達を凝視。遠目で見る。
そう、走馬灯でも見る。見詰めるような目をしながら。
「昔……」、
「大人しかった」
「可愛い、かった」
「初心で清くて、可憐な乙女だったのに……」と、遠いい目をすることがあるだろう? また凝視したことはないか?
まあ、それぐらい女性は、家庭を持つと本当に強くなる。男性よりもね。と、いうことだから女神さまの急変も驚くようなことはない。よくあることだから。
「何が痛いですか! あなた! しっかりしなさい! 諦めてどうするのですか! わらわを早くも未亡人にしてこの場……。いや、この世界に一人、孤独にして置き去りにして冥府へと旅立つとは言語道断、本末転倒。いい加減にしてください……。あなたは、わらわのこの肢体に未練はないのですか~? それに、一度の交わりで子ができた可能性だってあるやま知れぬのに。わらわとお腹にいるかも知れぬ子を、あなたは放置して冥府へと旅立つつもりなのですか~?」と。
急変した女神さまは、荒々しく李儒(理樹)へと不満を漏らし嘆き始める、だけではなく。
〈ギュッ! ギュッ!〉と。
更に李儒(理樹)の大事な物を強く握り。
「これはわらわの物です。物なのですから。あなた~。あなたはしっかり! しっかりしなさい!」、
「そしてわらわを。あなたの妃を守ってみせなさい」、
「わらわが魔王の代わりに、あなたへと力を譲渡しますから~。わかりましたか~?」
女神さま、李儒(理樹)のお妃さまらしく、荒々しく彼を鼓舞! そして説明を告げ終えればね。彼女は瞼を閉じるのだ。李儒(理樹)の背。後ろでさぁ。
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