第195話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【魔物】(6)

「この光り輝く電子、幽子の粒子よ。我に! 我の主に! 我の無力な主、王が、安易に使用できる力。最強の力を我の! 勇者! 騎士! 主へと授け給えぇ~、ではなく! 必ず授けなさい! わかりましたか~?」と。


 李儒(理樹)の女神さまは、彼の後ろ、後方、背で、自身の瞼、宝石のように光り輝く碧眼の瞳を閉じて、ブツブツと独り言。詠唱をこのように唱え始めるのだ。


 李儒(理樹)とお妃さま達の大事な物を強く握る行為をやめ、今の彼女、女神さまと変わらぬような傲慢な大きさの胸の前で、両手を握り締め祈る。捧げるように独り言、呪文を詠唱始めれば。


 あらあら不思議……。不思議な小槌、玉手箱ではないが。自身の背で独り言、呪文、詠唱を唱える女神さまを庇う。盾になるように身を挺して立ち塞がりながら。自分達へと。


「キッキ!」


「キャッ、キャ!」


「クワ!」


「ケッ、ケケ!」


「キキ!」と、奇声──!


 まあ、本当に何を言っている。吐いている。放っている。


 それも、荒々しく怒気を含んだ咆哮、怒声、罵声を吐き、放ち。憤慨しながら勢い良く、勇んで迫りくるおチビな一向一揆衆達のことを諦め顔。


 でも女神さま、妃さまから、主なのですから諦めずに自分を守れと、妻的振る舞いで鼓舞をされた李儒(理樹)だから凛と。そして威風堂々、勇者らしい振る舞いで、迫りくる敵を睨みつける彼、李儒(理樹)の利き腕、掌に、急にハンドガン! 片手銃が湧くのだ!


 それも李儒(理樹)の産まれ育った日本のアニメやマンガ、ライトノベルに出てくる。登場するSF的な、超未来的な片手レザー銃。拳銃ではなく。古いタイプ。火縄仕様の【マスケット銃】仕様の、白銀に神々しく光り輝き、金や赤の装飾が施された妖力、魔力ガンが李儒(理樹)の利き腕の掌に、急に湧く物だから。


「な、何これはぁあああっ⁉」と。


 彼は驚愕! 自身の口から絶叫も放つ。


「早くそれを! 魔力銃を使用して、わらわを! わらわのことを守りなさい。あなた!」と。


 相変わらず人が変わったように……。


 そう、最初は女神さまらしく乙女、純情、淑やかな振る舞いで、初心な女神さまだった彼女なのだが。魔王董卓閣下とは正反対……。まさに世のお母ちゃんらしい振る舞いで荒らしく、己の主、李儒(理樹)へと、今直ぐ、この世界で初めてできた魔法のアイテム。ハンドタイプの【マスケット銃】を使用して、自分自身を守れ。守護しろと急かす。




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