第175話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【四】(10)
〈ガン!〉
〈ガン! ガン!〉
〈ガシャン!〉
〈ガシャン! ガシャン!〉と。
自身の両目、瞳には映らない透明な壁。壁面を小さな亀裂を頼りに、自身が握る。このアプリケーションゲームの三國オンライン戦記では、もうない世界だったね。この電子の幽子の中に急にできた異世界、万物が新たに生を、子孫を残しつつ、少ない人口を徐々にだが増やしながら生活を営んでいく予定であった世界なのだが。この世界は皆も知っての通りで、【戦姫】と呼ばれるイブしかいない世界だから。
彼女達は繁殖行為ができず子孫を残し、次の時代へと繋げ残すことができない世界だった。筈だったのだが。
後漢の魔王と呼ばれた董卓仲頴が何の因果か、己の野心のためなのかはわからぬが。自身の片腕、幕僚、軍師だった者の転生者をアダムとして召喚をしたところからこの話しが始まった訳なのだが。
以前の名残、ゲームの頃の名残である。三國志に登場、出演をしている古の英霊達の数名が持参、所持している。ゲームの頃の戦姫達の能力値をグ―ンと、上昇をさせる宝具の一つ、武器である重さ五十斤もある三尖刀を片手で軽々と振り回す怪力のお姉さまこと大鬼(オーガ)の紀霊将軍なのだが。
まあ、自身の所持する宝具、三尖刀を振り回すと言う言い方は、少し大袈裟、過大な表現だったかも知れぬから言い直すのだが。
彼女は透明な障壁にある小さな傷に沿って最初は、注意深く丁寧に恐る恐ると亀裂を広げていったのだ。
「本当に何が起きても知りませんよ。姫さま」と。
紀霊将軍は、自身が側に仕える神々しく、麗しい上に。その神々しく艶やかな容姿に違わぬ色をした甲冑。黄金色の……。
そう、某アニメの【ゴー〇ド〇闘士】のように、黄金色に光り輝く甲冑を身に纏う。如何にも金持ち、貴族の姫さまらしい容姿、振る舞いをしている後漢の三公の一つ袁家のお姫さまの一人である袁術姫さまの下知、命令に対してこんな感じで、己の主へと不満を漏らしながら作業、壊し。空間の樋爪、亀裂、割れ目を丁寧に広げていくのだが。
誰が創ったかわからぬ、意図的に創られたこの空間の亀裂が大きく広がりだすと。
「本当に! 本当に! 何が起きても知りませんからね。姫様……。それこそ? 中にいるだろうと思われる? 姫様の大事な殿の身が危うくなるような事が起きても。私の責任ではないですからね。姫さま」と。
紀霊将軍は更に袁術嬢へと不満をもらしながら。
今度は己が片手で持ち握る。三尖刀の柄を両手で握り。五十斤も重さのある大武器、宝具を、今度こそは、両手で力まかせに振り回し、下ろして、亀裂を徐々に壊してくのではなくて撃破! 破壊! 完全に障壁破壊、粉砕を始めだすのだ。
それも、大変に大きな衝撃音と打撃音を出し、振動、震わせながら破壊、粉砕をおこない始めるのだが。
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