第169話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【四】(4)

 紀霊は、自身の主さまへと声をかけようと試みるのだよ。いくら辺りを見渡しても、彼女の主が探している李儒(理樹)。元彼女、袁術のゲーム、三國オンライン戦記での主であった李儒(理樹)の姿が無い。見当たらない様子だから。


「理樹(殿)は、木馬を捨てて、徒歩で、洛陽へと帰還、帰宅……、もう戻られたのではないですか?」と、言葉をかけ。


「……だから帰りましょう。我々も洛陽へと帰還をしましょう……。いつ、黄巾の乱が。【張姉妹】の扇動の策、スキルが発動をされるかわかりませんから帰宅をしましょう。姫様……」と、嘆願もするのだ。紀霊はね。


 ……だけではないようだ。彼女の困り果てている顔を凝視すればわかる通りでね。


「……もしも、【張姉妹】の扇動の策、スキルが発動……。いつも通りの切りの無い。意味不明な洛陽の、防御壁を壊す。破壊をする。そして無駄だとわかっている洛陽の防御値を下げる恒例作業がおこなわれだしたら。姫様は何進将軍の命で、黄巾の幻想兵。小人兵達を駆除、排除しなければいけませんから。何進将軍の下知が下りる前に、洛陽の宮殿内へと帰還しないと大変な事……。姫様は職務怠慢、放棄をして遊んでいた。油を売っていたと、何進将軍から怒りを買い。罰せられる事間違いありませんから。帰りましょう。帰還をしましょう。姫様……」と。


 紀霊は自身の主である袁術へと泣き言、というか? 彼女の側近らしく諫めるのだが。


 まあ、彼女の主、袁術は、袁家の我儘お姫様だから。


「そんなに、何進のことが気になるのならば紀霊。貴女だけ先に洛陽へと帰還をすればいいでしょう。いいでしょうに……」と、告げてくるのみで。彼女、紀霊の嘆願を聞こうとはしないのだ。袁家のお姫さまはね。


 だから紀霊は、困ってしまって、ワンワンな状態へと陥り。陥りながら。


「そんなぁ、姫さま……」と、嘆くのだった。




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