第162話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【三】(20)

「(本当に恥ずかしいな)」と、彼は自身の頬……。いや、己の顔全体を赤面させながら思う反面。


「(まあ、でも、戦姫(みんな)こんなものか……)」とも、思うのだ。


 だって、あの魔王董卓閣下自身も。


「生前は、儂自身にもあった。ついていた物の筈だから。李儒(理樹)……。お主の大事な物を見ても、儂自身がそんなにも興味をそそることはない。と、いうか? お主の大事な物を見て不快に思っても仕方がない筈なのに。儂はお主の大事な物……。それに対して本当に興味が湧いて仕方がない。ないからなぁ、李儒(理樹)……。ついつい食い入るように見ては、魅入ってしまうところを見ると。儂は身体だけではなく。自身の心の中の奥までも、完全に女性。女子(おなご)になっているようじゃ、李儒(理樹)……」と。


 魔王な董卓閣下は『フフフ』と、妖艶に微笑を浮かべ漏らしながら。寝所の床での最中に、以前、生前には自分にもあった物。ある物を見詰め、魅入りながら李儒(理樹)に、このように説明をしてくれたことがある。あるのだ。


 だから李儒(理樹)は過去……。魔王な董卓閣下が漏らした台詞を思い出しては苦笑いを浮かべ、漏らしていくのと。


 只今自分自身が置かれた立場、様子──。


 そう、自身の身体を上下左右に激しく動かす。暴れる。抗うことを使用にも身動き一つ……。己の目の瞼と口を動かす。動かし。不満と不快感と愚痴、嘆きを独り言で呟くが。エルフな女神さまとの会話。己の息遣いしかできないこの状況が、何故自分に起きたかも理解ができた。できているのだ。彼、李儒(理樹)には、これが魔法の【スキル】だと言うことも。





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