第10話
校舎のかげに見える人を追おうとゆっくり歩いていく。一歩、二歩、三歩いくと相手も気づいたようで校舎に入っていった。
ここから教室へもどるには遠回りで、ほとんどの人はその校舎からの道を使わない。
この道を使うということは僕に顔を見られたくない犯人かもしれない。いや、犯人だろう。少し歩みをはやめてみた。すると、相手も速度を上げた。制服を見ると女の子だ。クラスTシャツじゃなく制服をきているから二年生でもない。下級生はまだ入学してひと月しか経ってないし可能性は低い。下級生に恨まれていたら僕はかなりいやな奴ってことになってしまう。それだけは避けたい。と考えていると、もうすぐで分かれ道だ。左に曲がれば二年・三年生の教室に行き、右に曲がれば職員室と一年生の教室に行く。
彼女は右に曲がった。え、右に行くの?一年生かよ。僕はたった今かなりのいやな奴になってしまったショックを受けつつ、もうこれ以上嫌われることもないことがわかった。僕はその子に声をかけた。
「おい待て、なんで逃げるんだ。ちょっと止まってくれ。」
彼女は素直にも立ち止まった。振り返りこちらを見てわかった。彼女は看板娘の声をかけてきた子だ。本当にコッペパンの一件が嫌だったんだ。まじか。
「なんですか?」彼女は気味が悪いといわんばかりの困惑した声で聞いてきた。「サドルになんかしてただろう。」「いや、なんにもしてませんけど。」なんにもしてないなんて見え見えのウソに惑わされる僕ではない。「じゃあなんで自転車置き場にいたんだ?まだ準備の時間だろ。」普段あまり相手を問いただすことをしないから、体が熱くなってくることに気持ち悪くなってきた。その看板娘は何もしてないというような鋭い目で「だから何もしてないってば、自転車置き場はもの探しててちょっと校舎のうらで携帯いじってたの。そしたら追いかけてきたんでしょ、てか逆になんなの?」と言ってきた。
なんだ違ったのかよ。また振り出しだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます