第8話

茶色を塗る。茶色を塗る。茶色を塗る。

もう今後こんなに茶色を塗ることはないほど塗っている。

しゃもじくらいの大きさの筆で塗っているから重くて、少し腕がつかれる。

白色担当に昨日の音のことを聞いてみることにした。

「昨日この時間くらいにパンッ、って音したけどさ、あれなんの音か知ってる?」と音が鳴ったことを前提とした言い方をしてみた。すると白色担当は

「やっぱり鳴ってたよね。なんかみんな気にしてなかったから気のせいだと思ってたわ。なんの音だろう。」と言った。

聞こえた人はほかにもいることがわかった。

僕は続けて聞き出そうとするよりも先に白色担当が

「そういや昨日、サドルやられたらしいな。なんかしたのか?」聞いてきた。

子供の成長と噂話ははやいってよく言ったもんだ。

「え、なんでしってる?」

「自転車置き場で見ていたやつにきいた。あれか。B組の岡田にやられたんじゃね。あいつよく悪さばっかして、こないだもなんか割ってたし。そうだろ?」

「その岡田かどうかは知らないけどさ、僕はなにもしてないからなんでかわからないんだよ。」

「マジで?ただ単に切られただけかもな。」

「嫌がらせかよ。犯人捜しはしないけどむかつくわ。」

不可解な音を聞いたのにいつの間にか聞いてもないことに話がうつるし、もっと慎重に聞いていかなきゃいけないな。


作業もひと段落ついた。サドルが気になったから自転車置き場に見に行ってみた。

は!やっぱり。

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