第5話

家までは自転車で約十五分かかる。家の最寄り駅を抜け、二〇メートル先にある昔の冷蔵庫の形の、コンビニとかにあるような冷蔵庫の、駄菓子屋を曲がって五分くらいしたら到着だ。

自転車を降りてサドルにかけたスーパーの袋をとる。やっぱりサドルは切られているままだ。はっきりした理由が見当たらない気持ち悪さと切られたサドルを見て、面倒なことになるしサドルに似た色のテープで修理することにした。

家に入って、下駄箱のとびらをあけて一番下にある工具箱をとった。その中に紺色テープがあった。

これでいいか。サドルも直った。問題なし。

「ただいま。」

「おかえり。玄関のところでなんかしてたけどなにしてたの?」

リビングに入って、耳がいい母に聞かれた。うそつくのも変だし、

「サドルが切れたからテープ張ってた。」

「切れた?なんで?」

「なんか当たって切れたんじゃないか。」

「何によ?」

ああ、こうなるから面倒くさい。

「なんでもよくない?」

そういって弁当を母に手渡して部屋に入った。

エナメルバッグを椅子に置いて、制服からTシャツとスウェットパンツに着替えた。

ベッドに腰を落として、スマホを手に取った。特に何も来ていない。

ニュースアプリの通知を開いてぼけーっと眺めながら、サドルのことで忘れていた中庭の失笑されたことを思い出した。恥ずかしい。

そう思っていると電話が鳴った。スマホの画面にはユウタの名前が表示されている。なんだろうと思いつつ電話にでた。

「もしもし、どうした?」

「おまえさ、俺のかぶってたやつあるじゃん宇宙の。あれ知らない?」

「え、しらないけど。」

「知らないか。じゃまた。」ピッ。

あいつ早いな切るの。ていうか、僕に聞かれてもわからないし。中庭にいるときのことだろう。中庭。ああ、恥ずかしい。

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