第8話

 「このゴムベラはすごく硬いですよ」

 「とりあえず素手で行くわ」

 今からまともに戦おうとは思えない会話をしながら2人の少女が睨み合う。

 2人のうちきゅーとでびゅーちほーで美人で優しい女神の方がみー姉だ。もう片方はなんか小さい女の子。

 早速女の子が動く。ものすごいスピードでゴムベラを振ると、衝撃波が発生した。机を巻き上げながら迫る衝撃波。みー姉はそれに対して大きい声を出した。

 「はあっ!!!!!」

 そんなバトル漫画みたいな方法で止まるわけが無いと思ったのだが予想外に机は止まった、というか衝撃波がかき消された。

 「へえ......なかなかの使い手みたいですね」

 「今度はこっちから行くわ」

 みー姉が近くにあった机をぶん投げる。それは相手を正確に捉え、クリーンヒットしたように見えたが。

 「危ないじゃないですか。机をフルパワーで投げつけるなんて」

 相手に当たると同時に真半分に机が割れた。どうやらゴムベラで切った様だ。なんだあのゴムベラ。

 「くっ......なかなか強いわね」

 みー姉がつぶやく。

 「もういいですか? 終わりにしても。まだ何か策があるなら使っても構いませんよ」

 いつのまにか敵の両手にゴムベラが持たれている。単純に今の2倍攻撃されたら僕をかばって戦っているみー姉の方が不利だ。どうするんだ。

 「きーくん」

 こちらにみー姉が振り返る。

 「ここから武器使って本気出すけど、嫌いにならないでね」

 どんな武器を使ってもみー姉を嫌いになる気がしないが一応頷いておく。

 「嫌いにならないって約束するよ」

 「ありがと。じゃあ使うね」

 みー姉が武器を使うと決めたその時だった。

 「話してる余裕もあるみたいだし時間切れでーす」

 一方的なタイムリミットが告げられ、それと同時に教室中の机がみー姉に吹っ飛んで来た。そこには当然僕が隠れていた机も含まれていた。

 ほとんど棒立ちに近かったみー姉の周囲に机が固まり一つの球の様になった。流石にあれでは......どんな武器でもどうしようもないだろう。クソ......せっかくまた会えたのに......

 「じゃあきーくんさん、あなたも死んでもらいますね」

 女の子がゆっくりと近づいてくる。結局自分の特殊能力はわからないまま、みー姉も武器を使うのが遅すぎたのかやられてしまった。

 どこで間違ってしまったのか。それは恐らく連絡先の交換だろうな、もう本当にこんな事が起きるなんてね......

 迫り来る敵に目を閉じて覚悟を決めた時だった。

 最初に聞こえたのはなにかが切れる音と風切り音だった。次に聞こえたのは優しい声。

 「ごめんね。脱出が遅くなっちゃった」

 その声に目を開けるとさっきまでと逆側に僕は立っていた。目の前にはみー姉。

 そしてその手には、鰹節が握られていた。

 

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