第5話
そんな時間になっている気は無かったのだが、学校に着いたのは遅刻ギリギリの時間だった。
校門の前に強面の教師が立っている。こんなに強面だと逆に生徒は来にくいのでは無いかと思うほどの顔だ。まあ嘘だけど。実際は特に特徴のない顔だ。
「なんとか遅刻はしなかったね!」
昇降口で元気な声でみー姉が宣言する。こちらは肩で息をしていて答えるどころでは無かった。
「もっと鍛えた方がいいよ!少年!」
一つ違いの幼馴染はそういうと颯爽と走り去って行った。体力あるな。と、見ていると戻ってきた。何だろうか。
「お昼、行くから待っててね!」
またねと手を振って次こそみー姉は去って行った。
残された僕も自分の教室へと向かう。教室に着いたとしても特に友達はいないし、やる事もない。授業中も割と寝ている事が多い。
そんなわけで、午前中は寝て過ごしたのだった。
そして昼休み。初めて見るクラスメイトに廊下で呼んでいる上級生がいると言われて向かうとみー姉だった。
「さあ!お昼だよ!」
元気に宣言し、僕の手を掴んで来た。基本的に行動するときは手を繋ぐ事にしたらしい。
ちなみに今彼女はその背に朝見た登山にでも行くかのようなリュックを背負っている。やはりあれは弁当だったのか......ただ今日は体育が無かったから多いと割ときついかもな。
僕の手を引いてぐんぐん歩いて行くみー姉に尋ねる。
「どこまで行くの」
「屋上」
簡潔に答えられた。この学校は生徒の自主性に云々と言うわかりやすく言えば基本放置の方針で、屋上も解放されていて昼食などに使う生徒もいる。その屋上に行こうと言う。
「今日は天気もいいしね」
屋上には思ったよりも人が少なかった。天気はいいがまだ少し肌寒いからだろう。
早速空いているベンチの一つを陣取り、みー姉がカバンからまず自分用だろうか、とても小さな弁当箱を取り出した。
「これは私の分。こっちがきーくんのだよ!」
そう言って取り出されたのは巨大な......何だろうか。ボウリングの球と言うには大きすぎる球体の何かだった。
「やっぱり男の子だったらいっぱい食べるよねって思っておにぎりにしてみました!」
ああ、おにぎりなのか。あんなに大きいのは見た事がない。本気であの量が食べられると思っているのかとりあえず様子見してみるのかどっちだろうとみー姉を見てみると確実に前者だった。
「ちなみに何が入ってるの」
「とんかつでしょ、肉じゃがでしょ、ハンバーグでしょ、フランスパンでしょ、それからかにパンと......」
めまいがしそうなほど豪華なおにぎりだった。
「ああ......ありがとう。でも明日からはみー姉と同じくらいのお弁当がいいかな」
一応控えめに言っておく。
「じゃあ食べよっか!」
2人で食べ始める。このおにぎりすごいな。食べきれるかな。少しのおしゃべりと食事を続ける。
基本的にみー姉が授業中の事をしゃべっているところに相槌を打つ形だ。みー姉の話が途切れたとき、僕は一つの疑問を口にしたのだった。
「ねえ」
「何? なんでも答えるよ!」
「昨日襲って来たのって誰なの」
僕の言葉を聞いてみー姉の表情が変わる。
「それは......」
その後みー姉の口から語られたのはよくわからない今の状況だった。
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