争奪
まっつん
第1話 王位継承権
――バーリ王国首都、宮城前
新たなバーリ国王の誕生を祝うため多くの人々が集まっている。
新国王、アニエーロは馬にまたがり、道の両端に溢れ、ている人々に手を振りながら宮城へとゆっくり進んでいく。
歓声や祝福の演奏が鳴り響く中を抜けると、一般人の立ち入り禁止区画にはいる。
アニエーロは馬を降り、宮城へと続く階段中段に作られた演台へと向かっていく。
演台につき群衆の歓声に一通り答えたあと、第一声を発した。
「諸君の手厚い歓迎に、感謝する」
歓声はやみ、皆新国王の声に耳を傾ける。
「我が父、偉大なるマルカルロ王の跡は私が継ぐこととなった。父の王としての公務を間近で見てた私は様々な問題に直面する王という位を生涯全うできるのか不安に思うこともあった」
アニエーロは群衆を見渡し続けた。
「しかし、諸君の声援を受け、ここからの景色を見て私は考えを改めた。もはや不安はない。私は、国を、諸君を守るために身を捧げよう。どうかこれから二代目バーリ王、アニエーロをよろしく頼む」
アニエーロは礼をすると再び大きな歓声と、ファンファーレが鳴り響いた。
アニエーロはそれを背に受け、護衛の兵とともに階段を登り宮城内に姿を消した。
「ハッ。青臭いガキが・・・・・・」
群衆の最後列、馬車の中でその様子を聞いていたアベラルドは苛立っていた。
国中が祝福ムードに包まれる中、アニエーロの王位継承に不満を持つものもいた。
その筆頭がアベラルドである。
前バーリ王マルカルロは長らく教会と激しく対立していた。結果、教皇ヴェナルドによりバーリ王家は破門を受けた。
教皇は新しいバーリ王としてアベラルドを推薦したが、その後のバーリ王家と教皇との和議により破門は取り消され、前バーリ王マルカルロは息子のアニエーロを二代目の王として推薦した。
王位継承の話が有耶無耶になったことに腹を立てたアベラルドは今日までの間アニエーロに王位の請求をしつづけたが結果として王位継承は叶わなかった。
このようないきさつがあり、アベラルドは今回の王位継承に不満をつのらせていた。
このことが、後に新たな対立を生むこととなる――
つづく
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