第6話ケンカ売ってんのか、このうさぎ
うさぎは涙目になりながら耳をさすっている。
私がこのとんでもない状況に陥っている要因のうさぎを見つめた。このうさぎは夢じゃなければ幻でもない。しゃべっていてしかも宙に浮いている。もちっとした感触の真っ白いうさぎ。
「気色悪い」
「んなっ!」
ぼそっと言ったはずなのにやっぱりうさぎなだけに耳は良いんだ。
「気色悪いって何?普通だったらこのぬいぐるみみたいなうさぎをかわいいって言わない?言わないとしてもしゃべって宙に浮くうさぎを見たら『すごい』とか『どうなっているの』とか言わない?もっと驚こうよ!もっと関心示そうよ!」
自分でもあまり驚いていないが不思議だ。基本普段は喜怒哀楽が激しくない私でもこの状況はもっと騒いでもよかったかもしれない。おそらくあまりにもありえない展開に感情が追いついてこないのだろう。
「私、そもそもうさぎ嫌い」
「なんで?大抵の女の子はうさぎは好きなはずだよ」
どこ情報だよそれ。
「うさぎは見た目に反してうんこ食べるし性欲が強いっていうあまりにもエグいギャップがあるから好きじゃない」
「え」
うさぎは糞を食べるのは決して変態的な意味ではなくちゃんとした理由がある。うさぎが糞を食べるのは上手に栄養補給をするための大切な習慣だと以前特番の動物特集で知った。それでも愛くるしい見た目に反しての事実は私にはちょっとした衝撃を与えた。嫌いになったという表現は少し語弊があるかもしれない。その事実にドン引きしたという表現のほうが正しいかもしれない。
というかうさぎのくせに知らないのか。
「それに空腹時には自分の生まれたばかりの子供を食べるというショッキングな事実もあるし」
「僕はそんなこと」
「これは嘘だけど」
「君、性格悪いね」
「まあね」
うさぎは恨めしそうな目で睨んでくる。睨んできても所詮はうさぎなんでやっぱり怖くない。
「まったく、何回も確認したけどほんとにこの子なのかな?この次元の子なのかな?」
うさぎは宙に浮き、何もないところから丸まった一枚の紙を出した。そしてその丸まった紙を広げ私とその紙を交互に見始めた。
「
なんだその紙は。私のプロフィールが書かれているの?勝手に調べてプライバシーの侵害だぞ。
「特徴はボリュームのある長い黒髪、ジトッとした死んだ魚のような目。性格はひねくれていてかなりのものぐさ………うん、合っている」
私にケンカ売ってんのか、このうさぎ。
「あ、こっちは見てなかったかも。趣味は漫画とテレビと昼寝。特技ケーキ作り。え、意外だ」
なにブツブツ言っているんだ。勝手に調べ上げて気分悪い。
「部活は現在どこにも入ってなくて……あれ、中学は………え?これって」
「!」
私は『中学』『部活』という言葉に反応してしまい、うさぎの耳を強く掴んでしまった。私の過去を勝手に調べ、しかも目の前で述べられることにこれ以上我慢できなかった。
「………」
うさぎはなにかを言いたそうな顔をしながら私を見つめた。
「はあ」
私はため息混じりに息を吐きゆっくり手を放した。これじゃあいつまでたっても話が進まない。さっきから脱線してばっかりだ。むかつくこともめんどくさいことも多いがもう腹は括った。
私は腕を組み今までとは違う面持ちでうさぎを見た。
「私はこれから基本なにも言わない、口出しもしない。でも疑問があったら少しするかも」
私は聞く体勢に入ることにした。
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