好事家な男
その像を見せて数秒もしないうちに男は素早く像を包んだ。
和尚は大きく目を見開げ驚いていた。
「今となってはなんでこんな物を欲しがったりしたのでしょう。昔、行った小さな悪事の一斉精算なのでしょうか」
いつもの和尚なら、罪に大も小もありません、と叱っているところだが、今の和尚にその余裕はなかった。
あまりにも小像の迫力が凄かったからだ。
「それで…どうにかできますかね…」
男は不安化に聞いてきた。
はっきりと言って無理であろう。
さすがにここまでのものだとは思いもよらなかった。
しかし、このまま、無理ですと追い返すのはあまりにも酷だ。
和尚は考えた。そこである一人の人物を思い付いた。
しかしあの男の場所にいかすのか…
和尚は一瞬、躊躇ったが私にはこの小像をどうこう出来る知識もないのであの男を頼ることにした。
「私にこれをどうこうする力はありません。ですが、私の知り合いならどうにか出来るかもしれません」
男は食い入るように聞いてきた。
「して、その知り合いとは」
「今からそやつに紹介状を書く、ちょっとまっとおれ」
そうして和尚は一旦この部屋を離れた。
この像と二人っきりにされるのは落ち着かないのだが、この像をどうにか出来るかもしれないと思えばまだ我慢できるものだ。
数分後、和尚は戻ってきて男に一枚の紹介状を渡した。それと、その人物の名前と住所を聞き男は寺を後にした。
そこは、屋敷であった。
日本従来のものではなく、洋風の屋敷であった。
とりあえず玄関まで行くと使用人らしき人がいたので先ほどの和尚からもらった手紙を渡した。
それを見た使用人(?)は、少々お待ちをと言い、屋敷の中へ入って行った。
しばらくもしないまに、その人は戻ってき、私を部屋まで案内した。
ある部屋の前につくと使用人は止まり、ドアをノックした、すると部屋からどうぞ、と男の声がした。失礼しますと言ってドア開け部屋の主にこう言った。
「先ほどの手紙の人物を連れてきました」
「あぁ、ありがとう」
その男はきっちりとした洋風な衣服を身に纏っており、髪は少し茶色がかっていた。
「そこの君かね、怪しい小像を持っているのは」
突然呼ばれて少し驚いたが、すぐ気を取り直し、はいと答えた。
「そこで話すのは貴方に悪い。とりあえず部屋に入りたまえ」
そう、言われたので男は部屋に入った。
その部屋は壁一面に本が置いており、異国のものも混ざっていた。
床にも色々なよくわからないものが乱雑に置いてあった。
男は椅子を勧められ、そこに座った。
「少し汚くてすまないね」
部屋の主はそう笑いながら話かけてきた。
「名前はもう聞いてるかもしれないが一応名乗っておこう。私は『凛堂薫』という。以後お見知りおきを」
そう、言って凛堂と名乗った男は丁寧にお辞儀した。
「して、その小像というの少し見せてもらっていいかな」
凛堂にそう聞かれたので男は近くにあった机にその像をゆっくり置いた。
凛堂はそれを真剣な顔で覗きこんだ。
よくこんなものをそこまで見れるなと感心するほどみていた。
そして凛堂はこの像を見ながら口を開いた。
「これは眼球の神ですか…」
「眼球の神?そんなもの聞いたことありませんが」
「知らなくても無理はない。この神が出てくる書物はなかなかないのでね。出てくるのも日本や清の文献のみですし…」
そういうと、凛堂は黙り、顎に手をあてて考えていた。
男はそれを静かに見守っていた。
そして凛堂は静かに話始めた。
「確証はありませんが、この小像はなんとか出来るかもしれませんよ」
その言葉を聞き男は食い入るように、本当ですか、と聞いた。
「確証はありませんがね。ですがやってみるだけの価値は十分にありましね」
それを聞いて男は心の中で歓喜した。
この厄介な像をなんとか出来るかもしれない。
今はそれほど嬉しいことはありません。
「して、それはいつできますか…」
男は凛堂に聞いた。
「別に今からでも出来ますよ」
そんななんでもないようにそう答えた。
「それでは今すぐやって下さい!」
「えぇ、いいですよ」
凛堂は微笑しながらそう答えた。
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