嘘のウソ

カゲトモ

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 ジンジャー・ジンジャーはオーストラリアで人気のカクテルだ。ジンジャーワインをジンジャーエールで割った、甘口だけどピリリッと生姜の風味が効いたカクテル。そんなカクテルは目の前のサオリさんに良く似合う。

「髪形変えたんですね。凄くお似合です」

「あ、気づいてくれました? 嬉しいなぁ」

「気づきますとも。この間のアッシュカラーのマッシュヘアも素敵でしたけれど、赤みの強いカラーも良くお似合ですね」

「ありがとうございます。自分でも意外と似合っているなって思ってちょっとびっくりなんですけど。でも少し切りすぎちゃったかなぁ」

 ネイルにぷっくりと桜の模様の入った爪で耳元の揺れるピアスに触れた。良く見ると耳たぶにピアス穴がもう一つある。

「いいじゃないですか、涼やかな耳元にピアスが映えて素敵ですよ」

「そうかなぁ、ちょっと派手かなって思って」

 派手。確かにそう言われれば大ぶりなピアスを付ければ派手になるかもしれないけれど、今つけているような小さな石のピアスだったらむしろ上品に見える気がする。クールな髪形にちらっと見える女性らしさとか、男の大好物ですけど。なんて。

「ふふ、マスターがそう言ってくれるならまぁいいか」

 笑顔でロンググラスを持ち上げたサオリさんの指には細いリング。何て言ったっけ、あの、指の第一関節とか第二関節とかにつけるおしゃれリング。少し前まではファッションリングとかもつけていなかったのに、ザ定番OLファッションを脱ぎ捨てたサオリさんはグッと垢抜けた。

 今までの殻を脱いだからこそ、センスが上がったのか。それとももともとセンスはあったけど埋もれていただけなのか。サナギが蝶になったように、サオリさんは変わったように思う。きっと思うところもあっただろうけど、あの時サオリさんが当時の自分に憤っていたおかげでこうなれたのだから、あれはサオリさんにとって必要な試練だったと言うことだろう。

「えっと、実はそれで、マスターに相談が」

「おやおや、どうされました?」

 また意味の分からない同僚に疲れているのかい?

「実は、その」

 そう言ってまたカクテルをちびり。それから視線を外してうろうろ。うーん、これは直感的に恋バナかな? かなかな?

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