偽装からはじまる地震の話

 最近、本当に本業が忙しくて、小説もエッセイもなかなか書く時間がとれません。頭の中ではいろいろと書きたいネタを考えているんですが。そうして考えている時に、油圧ダンパーのデータ改竄という事件が。


 データ偽装、多くない? なんだか、モラルがなくなっているような。少なくとも技術者研究者にはモラルを持っていて欲しかったなぁ。


 さて、問題の油圧ダンパーです。そもそもダンパーとは、なにか。簡単に言ってしまえば、震動を吸収、あるいは減衰させる装置です。たとえば、車のショックアブソーバーやドアの開閉装置に使われています。

 原理的にはポンプや水鉄砲と同じ。少し年齢の高い人なら、竹などで空気でっぽう作ったでしょ? あれの先端を抑えたものだと考えればいいです。筒の中にアクチュエータが押し込まれる過程で、直線的な運動エネルギーが熱エネルギーに代わります。その変換に空気を使うものがエアダンパー、ガスを使うものがガスダンパー。空気もガスなので、エアダンパーもガスダンパーの一種と言えます。そして、油を使うものが油圧ダンパーです。

 空気は安価ですが、加わる力を制御することはとっても難しい。しかし、油圧は制御がとても簡単なのです。同じ液体といっても、水の場合は粘性が低いため効率が悪く、また、金属部分が錆びる(酸化する)可能性も高くなります。


 今回、偽装が問題になった油圧ダンパーは、制震装置に使われるものだそうです。制震装置とは、地震による揺れをダンパーによって吸収・減衰させる装置です。震動を制御するから制震なんですね。スカイツリーにも油圧ダンパーを使った制震装置が使われていますが、一般的な制震装置とは少し違っています。

 建物を地震から守るには、制震のほかに耐震、免震という考え方があります。耐震は、建物の強度を上げて揺れても破損しないようにする方法です。低層の建物は、耐震構造にした方が安上がりですし、建築コストは高くなりますが保守点検コストなどのランニングコストを抑えられます。一方免震は、地面と建物の間に免震装置を挟むことで、地震で地面が揺れてもその震動を建物に伝えないような構造を指します。代表的な免震装置は、ゴムを重ねて作った積層ゴムのアイソレーターです。揺れてもアイソレーターが変形することで、震動は建物に伝わりません。

 そういえば、このアイソレーターのデータも、以前改竄問題を起こしましたね。まったくどうなっているのやら。情けないったら。

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