同じことを繰り返しながら、違う結果を望むこと、それを狂気という。Ⅵ

「私はさっきの毒ヶ杜さんを見て、ある一つの仮説を立てたの」


「うん」


「でもそれはまだ私の中でしっかりと確立したものじゃないから、その前に聞かせて欲しい事があるの」


 畳にちゃぶ台。正座してそういう委員長は真っ直ぐ僕を見る。


「何かな?」


「目島君は毒ヶ杜さんと付き合ってるんだよね?」


 軽く俯いて委員長はそう言った。


「……うん」


 気まずさマックスでその質問を肯定する。


「……やっぱりそうなんだね。まぁ、そうか。自分の耳で直接聞いたんだからね。ごめん。変な事聞いちゃって」


 えへへっと後頭部をかいて委員長は笑った。


「いや……そのいつ聞いたの? それ」


 委員長が僕と棘が付き合っている事をいつ聞いたのか。


「廊下で話してたでしょう。二人で最初の宿泊施設で食堂に行く時」


 あの時か。確かあれはもうみんな食堂にいるからと軽んじたからだ。

 まさか、委員長が残ってたなんて。


「ん? 待って。それってあの箱拾った時だ」


「箱!?」


 それに委員長は敏感に反応した。


「ど、どうしたの?」


「今、箱を拾ったって」


 委員長は僕の方に距離を縮めてくる。


「うん。小さいこんくらいの綺麗に包装された箱だよ」


 僕は手でサイズを表して言った。


「うっそ!? 目島君が拾ってくれたの!?」


 委員長が急に声のボリュームを上げて言う。


「えっ、何?」


「それ、実は修学旅行で目島君に渡そうと思ってたプレゼントなんだよ」


「えっ。……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「渡そうと思ったら、落としてなくしちゃって、別のプレゼントとお詫びも考えて渡そうとしてたんだよ」


 ミラクルとはよく言ったものだ。僕が貰うはずだったものを自分で拾うというまさに軌跡。


「でも中はまだ開けてないんだ。人のだと思ってね」


「それは実は目島君のだったんだよ」


「そっか。……じゃあ貰ってもいいかな?改めて」


「えっ? そ、そんな一度落としちゃった物、渡せないよ」


 言われて委員長は慌てて言い返す。


「でも僕のなんでしょ? 委員長が一生懸命選んでくれたんだ。ちゃんともらうよ」


「……本当にいいの?」


首を縦に振って肯定する。


そんな僕を見た委員長はしばらく考えて声を出した。


「分かった。じゃあもらってくれる?」


「もちろん。後でしっかり確認させてもらうよ」


僕はにこっと笑って答えた。


「でも毒ヶ杜さんには私から貰ったって言わないで」


 真剣な表情の委員長。


 確かにあの調子だし、委員長から貰ったなんて言ってつけていたら、また豹変してしまう。


「わかった。この事は棘には言わないでおくよ」


 委員長はそれにうんと答えて目の前のお茶を口に運んだ。

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