同じことを繰り返しながら、違う結果を望むこと、それを狂気という。Ⅴ
***
「はぁはぁ……」
玄関の扉を急いで閉めて、僕は息を切らした。
「目島君……大丈夫?」
委員長は心配そうに僕の顔を覗きこむ。
「だい……じょぶ」
「待ってて。中片付けてくるから」
言って委員長は慌てた様子でドタドタと中に入っていった。
棘はというと暴れるのを必至に抑えて、家の中に入れると、急にパタッと気絶してしまった。
今はこの玄関先で死んだ様に眠っている。
「お待たせ。中に入っていいよ。毒ヶ杜さんをちゃんと寝かせてあげないと」
言って自分から率先して棘を運ぼうとする。
「……」
僕はそんな委員長を見て、頭の中でごちゃごちゃ物を考えていた。
「目島君。手伝って奥の部屋に布団敷いたから」
「あ、うん分かった」
委員長と一緒に棘を奥の部屋に寝かせると、僕達は居間に腰を下ろした。
委員長の家はいわゆる古きよき日本家屋といった感じで何部屋か繋がった構造になっていて、そこをふすまで何部屋かに区切っているといったようになっている。
物凄く、広くて部屋の数がかなり多い。
大層立派な家に住んでいる。
「粗茶ですが」
言って委員長は僕の前にお茶を出してくれた。
まさかこんな形で委員長の家にお邪魔する事になるとは、思ってもなかった。
「ありがとう」
僕はお茶を受け取ると、心を落ち着ける為に一口口にした。
「……」
「……」
部屋には僕と委員長の二人だけ。
沈黙だけがその場を支配していた。
(空気が重い。……そりゃそうだ。あんな事の後だもんな)
「えっと、家の人は?」
この沈黙と重たい空気を壊すべく、僕は口を開く。
「あっうん。今はみんな出てる。帰ってくるの夜だから」
今日平日だしな。普通はいないか。
「そっか。委員長どこかに出かけようとしてたみたいだけど、大丈夫?」
主に今回の事はエンカウントのタイミングが悪かったと思う。棘の豹変もあると思うが。
「うん。明日からの授業の予習しようと図書館に行こうと思ってただけだから、気にしないで」
「休みの日に予習って流石、委員長」
「ははっ。普通だよ」
再び沈黙が訪れる。
ダメだ。話を繋げようと頑張ってみるけど、すぐに話が終わってしまう。
「目島君」
「ふぁい!!」
いきなり呼ばれて驚いて変な声が出てしまった。
「はははっ。ごめんね、いきなり呼んじゃって驚いたでしょ?」
「いや、大丈夫。で、何?」
せっかく委員長から話をネタを振ってもらえるんだ。聞こうじゃない。
「うん。その。毒ヶ杜さんの事なんだけどね」
いきなり確信に触れてきた!!?
「あっ、うん」
驚いた。物凄く。でも冷静に考えるとどんな話をしても、あの出来事の後じゃ気が沈んですぐ終わる。
この話をする以外ないって事か。
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