同じことを繰り返しながら、違う結果を望むこと、それを狂気という。Ⅱ
***
「で、遊びに来たって具体的には何するの?」
毒ヶ杜さんの前にお茶を置いて僕は聞いた。
「ん~何だろう。そこまでは考えてないかな」
「何だそりゃ」
自分のお茶をふぅふぅしながら、毒ヶ杜さんを見た。
「正直、単純に目島君に会いたかっただけだったりして」
言ってぺろっと舌を出した。
「可愛いので許します」
「やった~」
ベッドの上に寝転んでいた毒ヶ杜さんはお茶を飲む為、フローリングに降りて暖かいお茶を啜る。
「ずるずるずる。はぁ~暖かい」
お茶を飲んで温まっている毒ヶ杜さん。絵になるし、見てると和むな。
「てか、それいつまで読んでるつもりなの?」
僕が指差すのは、ベッド下に封印されていたさっき毒ヶ杜さんがその封印を解いたエロ本。
「えっ、全部見るまで?」
「エロ本で読書しないで下さい」
「元来、読書は本でするものなんだよ。だからこれも例外ではない! びしっ!」
効果音まで自分で言っちゃう辺り、可愛いわ。よし、許そう。
毒ヶ杜さんにはとことん甘い僕であった。
「いいでしょう。エロ本で読書する事を許可します。しかし、母さんが来たら隠して下さい。僕が死にます」
「ふぁ~い」
気だるげに返事をして毒ヶ杜さんは読書楽しんでいる。
僕はといえば何をする訳でもなく、お茶を適当に啜りながら、そんな毒ヶ杜さんをただただ眺めていた。
それから数分、このふわふわした平和と形容するのが正解だと思う時間が過ぎていき、エロ本を熱心に噛り付いて見る毒ヶ杜さんが自分を眺める僕を見て言った。
「目島君。何かやる事ないの? 別にパソコンしててもいいんだよ?」
「ん~毒ヶ杜さんを眺める事をしてるよ」
「じゃなくて目島君が私を見てくれる事は嬉しいけど、読書中はやっぱり気になるよ」
持っていたエロ本を
「そうだよね、ごめん。この時間があまりにも平和でぽけーとしちゃってたよ」
「あっ、分かった」
「えっ、何?」
そう言って毒ヶ杜さんは指をパチンと鳴らした。
「もぉ~目島君たら~そうならそうと早く行ってよ~」
「な、何が?」
よく分かんないけど、毒ヶ杜さんは何かに気がついたらしく、僕を見てにやにやする。
「もう~目島君のいけずぅ~こっちをずっと見てたのはこれでしょう? 私とぉ~こういう事、したかったんだよね?」
「はい!?」
そう言って毒ヶ杜さんが示したのは、持っていたエロ本。つまり、この本に載っているような事をしたいと勘違いされてしまったようだった。
「私はいいよ? する? こ・う・い・う・の」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
「目島君から来る? 私から行こうか?」
「いやいやいやいやいや!!! やんないやんない」
僕は必至に否定に入る。
「えぇ~でもしたいんじゃないの?」
「それは勘違いだよ。本当にぽけっとしてただけだから」
身振り手振りで全力の否定に疲れた。
「そうなの? 目島君とならいいのにな~」
その言葉に僕の頭に、修学旅行での委員長の言葉がよぎる。
「……どうしたの? 目島君」
「えっ、あーごめん」
遠い目でもしてたのか、心配されてしまった。
「じぃ~」
と、思ったら急に僕をジト目で見だす。
「何?」
「……目島君何も隠し事してないよね?」
「どうしたの? 急に」
突然変なことを言い出す毒ヶ杜さんに身体がキュッと引き締まった。
「ってそんな事ないか。目島君だもんね、ごめんね変な事言って」
「うん。大丈夫僕こそごめん」
「何で目島君が謝るのよ。変なの」
言って僕らは、はははと笑いあった。
「毒ヶ杜さん」
「ん~何?」
僕は真っ直ぐ毒ヶ杜さんを見て、毒ヶ杜さんに伝える。
「僕は毒ヶ杜さんが好きだよ。本当に本気で好きなんだ。だから、その……そういうのはノリとか勢いとか遊びとかでしたくないんだ。ちゃんとゆっくり時間をかけてでいいと思う」
真っ赤な顔をして毒ヶ杜さんの持つ本を指を指して、僕は言った。
「目島君……うん! そうだね。私達のペースでいいよね。……とぅ!」
「ちょっと毒ヶ杜さん危ないよ!?」
言って毒ヶ杜さんは僕に向かって飛び掛ってきた。
しっかりと受け止めて、僕はもぉ~と眉を八の字にする。
毒ヶ杜さんは、はははっ目島君大好きと笑って僕に抱きつく。
「ねぇ。目島君」
「何?」
「今日の用事、言ってもいい?」
「用事あったの?」
「今、出来たの」
「うん。いいけど」
一幕置いて、毒ヶ杜さんは言った。
「棘。……って呼んで欲しい」
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