常連登場

 オフィスゴミの物流会社ルートの調査からも大収穫があった。

 「オブチとエコユニバーサルを経由した証拠がまた出ました」遠鐘が目を輝かせて報告した。

 「これまでの両社のシナリオが破綻したってわけか」伊刈が満足そうに応えた。

 「円のせいにしてましたけど不法投棄の常習ルートに関与している疑いが濃厚になりましたね」

 「安座間が心配そうに南側現場を見ていた理由にようやく合点がいったよ。一目でエコ経由のごみだってわかったんだ。しかし腑に落ちない点もあるな」

 「なんですか」

 「説明会に呼ばれていた業者がよりによってその前夜に同じ現場で不法投棄をやるだろうか」

 「どうなんでしょうか」

 「オブチ、エコ、円のほかにまだ名前の出ていない第四の業者があるんじゃないか」

 「そこが南側現場にオブチとエコの産廃を運んだってことですか」

 「少なくとも円はやってないと思うんだ」

 「安座間は誰がやったか知ってたんでしょうか」

 「たぶんね。ところでエコの豊洲工場長が処分先だと説明していた金剛産業の調査結果は?」

 「栃木県庁に確かめたところでは金剛産業の最終処分場は総容量がたった二万リューベしかなく、残存容量は一割を切っていて大量の産廃を処分する余裕はないそうです」

 「つまり金剛産業への処分は偽装だったってことか」

 「もっと耳寄りの情報を長嶋さんからもらいました。金剛産業の真のオーナーは社長の実兄で東北保全の一松という男なんだそうです。最近不法投棄の現行犯で宮城県警に逮捕されてるんです」

 「それじゃ金剛産業もエコや円とぐるだってことか」

 「どの会社も全部不法投棄常習会社なんですよ」遠鐘がいよいよ確信したように言った。

 「思ったより組織がでっかいってことか。エコの豊洲工場長にまた来てもらうしかないな」

 「すぐに呼び出します」

 エコユニバーサルの豊洲が肩を落として出頭してきた。

 「私は何も知らないんですよ」これまでの説明が嘘とわかってしまい面目丸潰れの豊洲はもはや何も弁明できなかった。

 「円以外のダンプがエコから持ち出した産廃はないんですか」

 「わかりません」

 「たとえば東北保全はどうです。金剛産業のオーナー会社のようですが」

 「社名は聞いたことがあります。今は名前が変わったんじゃないでしょうか」

 「新しい社名は覚えていますか」

 「確か根津商会です」今度は伊刈が絶句する番だった。根津産業、金剛産業、東北保全は、どれも一松の会社だったのだ。

 「根津商会ってどこの会社ですか」伊刈はとぼけて聞いてみた。

 「確か栃木です」

 「社長は大久保じゃないんですか」

 「大久保さんは東北清掃運搬ていう会社の社長じゃないですかね」

 「大杉という名前はどうですか」

 「さあ聞いたことがありませんね」

 「レーベルはどうですか」

 「そこならもちろん知ってますよ。うちとはライバルみたいな会社ですから」

 「なるほどわかりました。一松さんと大久保さんに会ったことはありますか」

 「ないです。うちの社長は知ってると思いますけど」

 「円の安座間社長はどうですか」

 「一度も会ったことがないんです。噂ではすごい美人だと聞きました」

 「今度の不法投棄、真犯人は誰だと思いますか」

 「それはもちろん円ですよ。ほかにありえないじゃないですか」そこだけは譲れないと言わんばかり豊洲はきっぱりと言明した。

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