第88話楽しく書けない……

 女神、ちょっとつらい。

 :だから、キレなさい。

 キレると書くの楽しいの?

 :楽しい。

 キレるといいもの書けるの?

 :書ける。

 ほんの些細なことなんですけれど、キレてみますから、聞いててください。

 :いいよ。

 今日は母午後になって、緑の手提げ袋を知らないかってしつこく聞いてきたんです。

 :それでもいいからしゃべって。

 母はあちこち探してるんですけれど、どうもその手提げ、祖母の血圧の薬が入っていたらしくて。明日までに見つけないと、祖母が薬を飲めなくて困るっていうんです。

 :よくある話じゃない。

 けど! 従弟の結婚式に行くからと、祖母が一抱えもある荷物を詰めて飛行場へ行こうとしたので、母が止めたんですって。こんなにいろいろいらないから、必要なものだけ入れていけって。そうしたら、家に帰ってきたらその手提げが紛失している。どういうことかというと、手提げに入っていた一か月分の薬をそのままに、母は「いらないものを持って行かないで」といって、取り上げた。取り上げた手提げは母の部屋に置き去りになったそうなんだけど、今日になって祖母が、物干しの下に置いたといいだした。わたくし見たけどなかったし、母は自分の部屋に置いてきたといいながら、探すのはてんで違うところ。家中探し回ってる。で、わたくしがムカついたのは、手提げがなくなって困っているはずの祖母が、手も足も動かさず、リビングでTV観てる。母はしゃかしゃか動き回ってる、そのよこで知らぬ存ぜぬと居座って、「音が小さか」と言ってTVに見入っている。この厚かましさ!

 自分の荷物なら自分で探せばいいでしょう! なにのんびりしてるの!?

 …と、言うわけなのです。

 女神、キレ具合、これくらいでOK?

 :OKですよ。

 よし! がんばる!!

 っ大吟醸

 :あのさー。

 はい。

 :大吟醸もういいよ。ぬか漬けが食べたい。

 次に持ってまいります。

 :そっか、残念。

 今母も祖母も旅行から帰ってきたばかりでぬか漬けつけてる場合じゃないんですよ。ご勘弁ください。芋焼酎おいていきますから。

 :芋焼酎でもいいわ。

 ありがとうございます!

 :いえいえ。

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