第57話ちょっとしたジレンマ

 カクヨムに来てからというもの、書き続けることに必死で、そのクオリティーについて考えることがなかった。己を知らず、という言葉がある。いろいろ回り道もした。

 しかし、コンテストに参加している人の作品を読んだら、これまた面白い。技術とか、信念とか、そういうごわついたものを感じさせない、ワクワクする楽しさ。

 これ、どうやって書いてるのだろう? 言葉のセンス、わたくし古い? と首を傾げる。

 こんなに面白い作品がゴロゴロしてるなら、自分の作品なんていらないじゃない?

 いやでも、わたくし自身の気持ちはどうなのよ? 書きたいんでしょ? 書くことに無駄もいらないもないじゃないの。書いたらいいじゃない。書きなさい。

 そう思って書こうとしている。

 胸の馬力が必要だ。重たい何かをぶっとばす、そういう気持ちが必要だ。

 過去にこういうことがあったとき、わたくしはまるで少年漫画の主人公みたいに(不良っぽく)「勝てばいいんでしょ!」精神でやってきた。結果をだせばいいんでしょう、と。やってやるよ、と。

 とりあえず、やらなきゃ始まらないんである。心を決めて、ガツンと行くぜ!

(目は据わり気味に)キシャー!!!

 :あんまり小さいうちから言語能力に特化すると。

 :だーめだこりゃってことに……。

 ううん、特化してたのはお絵かきよ。うさぎの後ろ脚の関節を描くのがうまかった。四、五歳のころだけど。

 :おどりゃ! ケーサツ呼ばんかいのう!

 どこの世界のチンピラだ。

 :ほらね。崩れるでしょ。

 崩れるってなにが?

 :言語。

 それは作者のキャラクターがたえず揺らいでるからよ。むしろ心動かされない会話には加わりたくない。

 :真面目か。

 :まじめなんだな。

 :たりめーよ。

 :なに始めてんの?

 :アドバイス。

 :必要あんのか?

 とりあえず初心に還って、コツコツ書いてく。それでいいんでしょ?

 :イエース!

 ありがとう。これ呑んで。

 つ大吟醸

 :ういっす。

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