第30話作戦会議

 百里をゆくときは九十九里をもって半分とせよ。

 という教えがある。

 だけど、小説には盛り上げるべき、か所はだいたい決まっている。

 クライマックスをどうするか、そしてラストをどうするかで評価が決まるといっていい。

 ま、クライマックスまで読んでもらえるかという問題もあるにしろ、そこはスピード感が大事で。

 なんか同時に考えねばならないという難題がある。

 わたくしはたった一つの主題をまっすぐ追いかけるのが好き。

 複数の主題をからめて、テーマを打ち出すというのが苦手だ。

 :うん。そういう台本書いてたね。

 一つの主題の中に、おりこみ済みのテーマを入れるのは好き。

 :友情とラブは必須。

 あたりまえ。恋とバトルのストーリーに親子愛を織り交ぜるとか、姉妹の絆を描くとか、そういうのは好き。

 なのに、母は「この話のテーマはなんなの?」って聞いてくる。

 物語に教訓的なものを求められても、別に反戦を訴えてるとか、そういうんじゃないから、物語の一部をさして「これがテーマ?」って聞かれるのは困る。

 わたくしはいろんなものを書きたいんだよ。

 もっと自由に書きたいよ……。

 いや、テーマが大事なのはわかってるし、挑戦もしているんだけどね。

 母が面白いと言ってくれる作品は、わたくし、書いてて面白くないんだよ。

 母、「孫子に囲まれて楽しく過ごして、その先も子孫が続いていくのが幸せ」

 って言うけど、どういう舞台背景で、それを書けばいいのか、ストーリーを組み立てようとするとかならずアンチテーゼは必要だから、不幸なことも乗り越えてく話になるよ?

 って、言ったら、「それはちょっと……」ってしぶる。

 最初から最後までお幸せな物語ってチートじゃないかい!?

 格闘ゲームでイージーモードにして、AIプレイヤーをひたすらタコ殴りする感じ。

 それとも、縁側のある庭先で猫と一緒にほのぼのしたのだったら、納得してくれるかな。猫とおしゃべりするおばあさんが主人公で、休みには孫が遊びに来るのを楽しみにしてる。……その孫が、虫や魚を獲って来ては見せてくれるのでそのたびに悶着がある。いや、悶着はいらないか。しかし事件が起こしづらいぞ。どうすればいいのだろうか。おばあちゃんと孫の奇妙奇天烈な夏休みのお話、この路線で考えてみるかなあ……。わたくしの周りは元気なお年寄りばっかりで、ちっともほのぼのじゃないんだけど、いけるだろうか……。夏目友人帳は主人公が孫だし、参考にならないなあ。しかもあれは妖怪ブームにのっかったジャンルだし。子孫繁栄を望まないわたくしには、書きづらいテーマだなあ。

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