第35話 side可憐、蓮の正体に気付いた瞬間

Monstersモンスターズ communityコミュニティー って……嘘でしょ……」

 うちは無意識に言葉を発していた。だって、そのゲームはうちとましろんがしているVRゲームだから……。


「いや、ほんとだが……。その口振りからするに少しは知ってるんだな?」

「知ってるもなにもうちもそのゲームをし……ううん、うちもそのゲームに興味あったんだ」


 ゲームをしてる。と言うことは蓮に言わず、あくまで興味があることを伝えてみる。そう、うちには蓮を驚かすという計画が出来たのだ。

 ーーこの時。うちが逆に驚かされる結果になろうとは、知りもしなかった。


「普通に面白いぞ? モンスターを狩るのは当然だが、ショッピングも出来るし、プレイヤーとも話せるし」

「ほー。やっぱり情報通りだねぇ。……そうそう。うちが、そのゲームを買った時のために蓮のプレイヤーネームを教えてよ」


 プレイヤーネームを教えてくれればフレンド申請が出来る。そのメッセージから『うちは可憐じゃー!』なんて一言を添えて蓮を驚かせる。これがうちの目的だったがーーこの計画は大きく狂うことになる。


「プレイヤーネームは『レオ』。このレオってのは昔飼ってた犬の名前なんだ」

「……は」

 うちは無意識に固まった。固まってしまった。


だ、だってその名前は『レオっち』がその名前を付けた理由と同じだったから……。それに、『レオ』は、うちのフレンドなのかもしれないのだから……。


「お、おーい。どうした可憐」

「ね、ねぇ……蓮。その『レオ』ってプレイヤーネームなんだけど、『Lエル eイー oオー』とか『R アール eイー oオー』とかじゃなくて、カタカナのレオなの……?」


『レオ』にも、今言った言葉だけで三種類もあるのだ。もしかしたらうちが思っているレオっちじゃない可能性は残っている……。


「ああ、カタカナのレオだな」

「え、えっと。ランクってなにさ……?」


「一時期やり込んでた時期があったから82ランク」

「82ランク……。え、えっと、服装はなにさ……?」


 あのゲームの上位ランクの基準は75ランク以上だ。

 蓮は『レオ』の名でプレイしており、上位プレイヤーであることを示していた。……もう、この時点であること、、、、が決まっているようなものだった。


「上下白の服。フード付きコートってやつだな」

「……か、確定、じゃん…………」


 この瞬間、うちはこの蓮がレオっちであることに……。ましろんの大好きなプレイヤーであることに気が付いてしまった……。


 (だよね、似ているはずだよね。だって、蓮はレオっちだったんだから……)


「ゲームを買ったら教えてくれよ。あ、でも既に『カレン』の名は使われてるからローマ字の『Karen』とかしか使えないかもだな」


うん、『カレン』は使われている。だって、そのプレイヤーネームはうちが使ってるんだし……。


「そ、そうなんだ……。で、でもそのゲーム、うち達の年齢層少ないんじゃない?」

「まぁ、確かにそうなんだが……俺と仲良くしてくれる同年代のプレイヤーと、一個下のプレイヤーはいるぞ?」


「へ、へぇ……」

「『モカ』と『カレン』って言うんだけど、普通に優しくしてくれるんだ。あ、そのVRの『カレン』なんだが、名前の通りに可憐にそっくりだぞ?」

「な、名前が一緒だと、性格も似てるのかなぁー? あははー」


 その時、うちのひたいに冷や汗が出てきた。もう、種明かしが出来る状態ではなくなったのだ。


「でも、カレンがVRに興味があるとは思わなかったな……。この話をして良かったよ」

「あ、あー! うちまだ聞いてないんだけど。VRの気になってる相手!」


 蓮がレオっちだと分かった今、レオっちに気になる相手が誰なのか……絶対に聞かなければならないことだった。


「その相手は流石に言えないんだが、昨日そのプレイヤーと買い物をしてな……。そこからいろいろとあって……」

「ははぁー、なるほどねぇ……」


 今朝のましろんのにやけ具合、そして蓮が発した『デート』という言葉で蓮の気になっている相手が『モカ』であることにうちは気付いた。


(……良かったねぇましろん。デート大成功じゃん)

 心の中でましろんを祝福するうちは、どうにか冷静を偽る。


「じゃあ告白してみたら? VRの中なんだしそんなの結構あるんでしょ?」


『レオっち』が『モカ』に告白すれば1000%で付き合える。ましろんを応援する身としては、1秒でも早く付き合ってほしい気持ちでいっぱいなのだ。


そう、『レオっち』に対するましろんの想いは、イヤと言うほどに聞いているのだから。


「いや、その相手が強敵なんだよ。そのVR世界でアイドルって呼ばれてるレベルでな……」

「……はぁ、そんなことだろうとは思ったけどさ」


(ましろんはレオっちに釣り合わないとか言って、レオっちはこれなのか……。なんでお互いに尻込みしてるんだか……)


 『モカはあんたのこと好きなんだよ!?』なんて言葉をうちはどうにか抑える。


「いや、それにまだ好きってわけじゃないんだ。気になってるってだけで」

「でも、それでいいの? そんな感じだと誰かに取られちゃう、、、、、、、、、んじゃないの? 相手さんは人気者なんだから」


 うちは、危機感を煽らせる作戦を取った。あんな一途な想いを抱いているモカが他の相手に目移りすることはない。しかし、こう言うだけで蓮には焦りが生じるはずなのだ。


「……た、確かに。好きな人がいるみたいなことを言ってたな……」

「そうなんだー」


(それはあんただよ……。本当に気付いてなかったんかいな……)

 根本的なところは流石だった。


「じゃあ頑張るしかないでしょ。アピールでもなんでもして、さ。相手のことが気になってるっていうだけで好きになる前兆なんだし」

「そう……かもな」


「悩みを解決出来てない以上、これからもうちに相談するんだよ? じゃあそうだねぇ、……蓮がその女の子と付き合うことが出来たら、うちもそのゲームを買おっかな」


『もう買ってるんだけどね』なんて一人ツッコミをうちは入れる。


「な、なんだそれ……。条件厳しすぎだろ」

「その段階で逃げ腰だからいけないの。もっとしゃんとする!」

「お、おう……」


(モカはあんたのこと好きなんだから……全く)

 はぁ、とバレないようにため息を吐くうちは、席を外すことを伝える。


「じゃ、うちの相談の方も頼んだよ? うちはちょっと席を外すから」

「分かった」


 そうして蓮と別れた後に、うちは一時トイレに避難する。

 ーーうちはどうしても声に出して言いたいことがあったのだ。


 うちはトイレに人が居ないことを確認してーー

「レオっちじゃん、リアルレオっちじゃん!? ど、どうしよ……うちはどうすれば良いのっーーッッ!? いや、これはヤバイってぇえええええ!!」


 予想外もしなかった展開に、これから先どうすれば良いのかと一人悶えました。

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