第4話ナルとメル、パーパが学校に呼びだされる

 ファーグス先生が教室を飛び出した次の日、パーパが学校に呼びだされたの。


 今日は、なぜかファーグス先生じゃない先生が授業をしたんだ。


 授業が終わるころ、見学の時に学校を案内してくれた女の人が教室に来た。

 この前は優しそうだったのに、今日はとても厳しい顔をしていたの。


 メルと私は、その人に連れられて、三階にあるお部屋の前まで来た。

 その人がノックすると、ドアが開いて優しそうなおじいさんが顔を出したの。


 部屋に入ると、そのおじいさんは窓際の大きな椅子に座って、手前にあるソファーにはパーパが座ってたの。

 そして、その前には、髪にねぐせがついたファーグス先生が座ってた。

 椅子に座ったおじいさんが、静かな声で話したの。


「ファーグス先生の言い分では、この生徒たちに虚言癖があるということですが」


 パーパは、とても落ちついていたわ。


「その虚言とやらの内容をお聞かせ願えますか?」


「それはひどいものです! 

 あれでは授業になりません!」


 ファーグス先生が顔をまっ赤にして叫んでる。

 おじいさんが、ファーグス先生をジロリと見たの。


「シロー殿は、虚言の内容を尋ねられておられる。

 まず、それを説明しなさい」


 ファーグス先生が、つばを飛ばしながら説明を始めたわ。


「虚言で済まされるなどというものではありません。

 お城にマウンテンラビットがいるなどと言うのです」


 これには、パーパではなくて、そのおじいさんが答えたの。


「先生が言っておるのは、アリスト王城のことかな」


「当たり前です!」


「ワシはこの目で、王城にいるマウンテンラビットを見たぞ」


「えっ……」


 ファーグス先生がまっ青になっているわ。


「女王陛下の話では、マウンテンラビットは、本当は神獣しんじゅうというらしい。

『ウサ子』と呼んで可愛がっておられたよ」


「そそそ、そんな馬鹿な……」


 ファーグス先生の顔色が余計に青くなったわね。

 でも、「そそそ」って何かしら。


「し、しかし、この子らは、ワイバーンを危険がない魔獣だと言ったのですよ」


「ちょっと失礼」


 パーパが立ちあがると、おじいさんと何か小声で話していたわ。

 おじいさんが頷くと、部屋の壁が白くなったの。


 女の人と、ファーグス先生は驚いていたけど、私とメルはいつも通りだった。

 だって、それがパーパの魔法だって分かっていたから。


 少しすると、白い壁に映像が映ったの。

 これは、エルフの国エルファリアで、私とメルがワイバーンのトンちゃんたちと遊んでいるところね。

 地面に首を着けたトンちゃんたちの頭を、私とメルがいい子いい子してるの。


「そそそ、そんな馬鹿なっ!」


 ほら、また先生が「そそそ」って言った。

 なんだろ、「そそそ」って。


 パーパが指を鳴らすと、テーブルの上に突然メダルが現れたの。


「これは、この娘がエルフ王から頂いたものです」


 女の人が、それを受けとって、おじいさんのところに持っていったわ。


「ふむ、なになに。

『魔獣大使 この者にすべての魔獣の騎乗を許す』と書いてあるな。 

 おお、裏にも文字がある。

『救国の英雄へ エルフ王』」


 おじいさん、すごいね。

 人族にはエルフ文字が読める人は少ないんだよ。

 あのメダルは、私とメルが、エルフの王様からもらったんだ。

 

 ファーグス先生は、青い顔のまま口を開いてるの。

 アゴが外れちゃったみたい。

 

 おじいさんが、すごく厳しい声で言ったの。


「ファーグス、教師たるものが、生徒の言葉を嘘と決めつけてどうする。

 自分に知らぬことがあるから人は学ぶのじゃ。

 知ることに関して傲慢なお主は、教師失格じゃ」


 ちょっと先生が可哀そうかなと私が思ったとき、パーパがこう言ったの。


「ファーグス先生。

 私はあなたを信頼してナルとメルを預けています。

 これからもよろしくお願いします」


 次の瞬間、先生のすごい泣き声が始まったの。

 私たちは、女の先生に連れられてすぐ教室に戻ったから、それから何があったか知らないの。

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