第4話 願いが叶う木

序話 洞窟

 

 少女が気づいた時、あたりは闇に包まれていた。

 初めて体験する真の闇はあまりに怖ろしくて、少女は立ち上がることすら出来なかった。


 精一杯の勇気をふりしぼって手を伸ばしてみたけれど、手に触れるものは全てごつごつとした岩肌ばかりだった。ただ、地面も壁も不思議と乾いていて、それほど寒くはなかった。


 今はたぶん夜なのだろう。朝になれば、きっと明るくなる。そう信じて、少女はじっと我慢強く待ち続けたけれど、いつまで待っても太陽の光を見ることは出来なかった。


 暗闇の中で動けないまま、少女がじっとしていると、カラカラカラという音が聞こえてきた。

 少女がハッと身じろぎをした時、声が聞こえた。


「誰かいるの?」

 少年の声だった。


「あの、あたし……」

 恐怖のあまり、少女はうまく声が出せない。


「きみも閉じ込められたの? なら、ここから離れちゃだめだよ。この洞窟は迷路になっているみたいだからね。それに、ここにいれば、水や食料の心配はないよ。ぼくの名前はケイト。きみは?」


「あたしは……リエ」


 暗闇の中で差しのべた手が、偶然触れ合った。



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