雨宮喫茶店
meru.
プロローグ
相談に乗ってくれる喫茶店があるという話を、風の便りで聞いたことがある。この喫茶店について僕が知っている情報は二つ。
一つ、オーナーが一人でやっていて、お客さんと一対一が絶対だということ。そのため、客が一人来店したらその人が帰るまでは、店の前に出してある看板をクローズにするそうだ。
二つ、その喫茶店の名前が『
誰に聞いたか、どこで聞いたかなんて覚えてないのに、なぜか頭の片隅に残っている。存在を主張していて、知って半年は経っているのに、今の今まで忘れることはなかった。どこにあるかもわからなければ、どういった内容を相談できるかもわからない。こんな謎に満ち溢れた喫茶店に僕は興味を抱いた。
とは言っても本格的に興味を抱きだしたのはつい一か月前ほど。主に職場での人間関係でストレスが溜まりまくり、決められた道をひたすら歩くようなこの生活に嫌気がさしたからだった。半年経っても忘れることがなかったのは、この時のためだったのかもしれない。
それから僕は、休日になると県内の喫茶店を片っ端から巡っている。
もし行動範囲を広げて探した後に近場にありましたなんて、灯台下暗しだった場合にはダメージが大きすぎる。
さあ、今日はどこへ行くかな。探すのあまり時間は使いたくない。一日でも早く見つかるといいんだけど。
雨宮喫茶店 meru. @meru03
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