11話:帰り道
「最後の店員の表情見ました?ありえないって顔してぼけーってしてましたね!」
「初挑戦で、初のパーフェクトを達成。さすが魔女を飼い馴らすだけのことをしている人は違うっす」
「ははは……」
魔導射的の店からギルドに向かって帰っている途中、ライアン達三人衆はずっとこんな感じでテンションが高かった。
……というのも俺がパーフェクト賞なるものを取ってしまったからだ。
何となく予想していたが、俺のある意味特殊能力のような『平均力』
こいつが今回も発動したらしく、的に当たる平均ではなく的の大きさの平均を選んだらしく、どんな風に撃ってもど真ん中に当たるといったチートっぷりを発揮した。
お店からは報酬のレアアイテムをごっそりとタダでもらい、今回は副賞で10000バレッドが付いてきた……なんか、お店側に申し訳ない気がしたがもらえるものはありがたくいただくとしよう。
「それよりいいのか、ミナトの兄貴。2000バレッドも貰っちまってよ」
「これらが手に入ったのは金を貸してくれたマイクのおかげだ、借りた分+利子ってことで飲むなり食うなり好きに使ってくれ」
「ライアン。やはりミナトの兄貴は懐が広い、出会い頭の因縁を早々に無くしておいてよかったと思いませんか?」
「チッ!いつも面倒くさいことを言うお前だが、今回ばかりは褒めてやるよアレン!!」
お互い言い合いながらも笑いあえる仲っていいな、俺もアリシア以外の仲間が増えたら一度はあんな感じでやってみたいものだ。
「それよりも荷物持ってもらって悪いな、思ったよりもたくさん買うことになって……」
「こういう時は戦士の力が役に立つってものよ!」
「あ、私は魔法使いなのであんまり力は……」
「自分は盗賊っす!でも人の物は盗ったことないっす」
手に入った賞金で明日ダンジョンで使うであろう物をひたすら買った。
殆どが素材で完成品はない、市販品をそのまま買うといった方法もあるが、自分で作ったほうが安いし、今後現地調達しなければならないこともあるだろうとかんがえたのだ。
しかし、そのせいで荷物の量が増えてしまい自分で持ちきれなくなり三人にも持ってもらっていたのだ。
「あ、あのー!」
「ギルドまで運んでもらえばあとは一人でやるからそれまでは頼むよ……ん?」
ギルドまでもうすぐ着く距離まで来た時だった。
俺達の後ろから一人の少女が声をかけてきた。
紫色の縦ロールツインテール、赤い瞳はルビーのように輝き、ちょこっと見えた小さ八重歯が幼さを際立てさせている。
身にまとう衣装は……あれだ、アニメの敵ヒロインが着ているゴスロリっぽい衣装を纏っている。それからきわめつけに……
「……棺桶?」
背中にはドラキュラなんかが入ってそうな大きな棺桶をさながらギターケースのように背負っていた。
とりあえず話を聞いてみることにしよう。
「えーっと、君は?」
「あ、すみません!私マコって言います!いきなり声をかけてしまったすみません」
「全然気にしていないよ、俺はあり……ミナト。それで何か用かい?」
「はい!……その、よろしければなんですけど、さきほど射的屋でパーフェクト賞をもらったと思うのですけど……」
「あぁ、色々ともらったな」
「その中にある『漆黒の翼』をマコに譲ってくれませんか!!?」
マコと名乗る少女は頭を下げた。
因みにマコが言っていた『漆黒の翼』というアイテムは装飾品のようで、その名の通り装備すると背中に黒い翼が生え、自分の意思で動かせることができる。
ただ、動かせるといっても飛ぶことはできないので見た目だけの衣装アイテムだ。
荷物がいっぱいになって持てなくなったので、今はライアンのモヒカン頭にくっ付いている、まるで悪魔か何かのように見えて不気味だ。
「おっ!よく見ればお前さん、さっきミナトの兄貴の前にやってた嬢ちゃんじゃねぇか?」
「あぁ、パーフェクト寸前だったっていう……」
ライアンに言われて気が付いたが、後ろ姿だけだったので最初は分からなかった。
「はい、そうです!……マコ、あれがどうしても欲しくてここ数日ずーっと通って、今日もう少しでクリア出来そうだったんですけど……そしたらお兄さん達がパーフェクトを取ったって聞いてつい追いかけてきてしまいました!」
マコの瞳は一言では言い表せない思いというか、信念の炎がメラメラと燃えている気がした。
「そうか、ちょっと待っててくれ……っと、ほいよ」
「えっ!?あの、おいくらですか……?」
「お金はいらないよ、今まで努力していた分のご褒美ってことでプレゼントだ……こんな物をプレゼントするのも気が引けるけどね」
「あ、ありがとうございます……!!大切にします!!」
ライアンの頭に生えていた『漆黒の翼』を取ると、マコに手渡した。
MMOの時も知り合いにこうやって使えそうで使えないアイテムを集めている子がいたな、そういえば。
俺からのプレゼントを受け取ったマコはお礼を言うと、さっそく『漆黒の翼』を装備した。
うーん、女の子が装備するとなかなか見栄えが良くなる、可愛いな。
「くくく……失われし我の両翼よ、再び会いまみえることができて嬉しいぞ!」
おや?
突然目つきが変わったと思ったら怪しげなポーズをとりはじめた。
「漆黒の翼、魔力の源たる我の肉体の一部……深淵の先よりもさらに深い闇、奈落の底に眠りし同胞たちも喜んでおるぞ!!わが名は魔王マコ姫、煉獄の底より舞い戻りし王なり!」
「なるほどね……」
もしかしなくてもこの子は、中二病かなにかだ……うん。
ギルド前の通路で高笑いをする王だか姫だかよくわからない設定のマコを何とも言えない視線で俺達は見ていた。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます