高嶺の花より洞窟の宝石の方が美しい

五月雨

第1話健康な少女

この世界に数年前、素晴らしい病気が発生した。

これに掛かると皆が美しい顔になる、というものだ。

しかも掛かりやすくこの世界の9割の人がもうかかったらしい。

残りの1割はいじめの対象になったり、実験の対象になったりした。

僕は元々イケメンの類であったからかかっているのかも知らない。ただ一つ言えるのは美しい顔になる病気にかからなかった風邪もひかない健康的な少女、柳に恋をしている。

柳はもちろんいじめられていた。しかし彼女は反撃もせず、にこにこ笑っていた。

その姿が健気すぎて、可愛すぎて、好きになった。

しかし僕はイケメンだ。周りには美女しか集まらない。

いま僕は高嶺の花の高嶺に囲まれて崖のしたにすぐに行けない。

彼女がこっちに来てくれたらいいのに。

ついそう思ってしまう。

昔は簡単に話しかけられたのになんで今はそんなことも出来なくなったんだろう。

こう僕が落ち込んでいた翌日。

柳は初めて学校を休んだ。

皆はついに柳も美少女か?と興奮しながら言っていた。

とりあえず僕は席が近いため彼女に手紙やら渡す役目を持つことになった。

すごい嬉しかった。

しかし先生に教えてもらった住所は、彼女の家ではなかった。

国立病院だった。美しい顔になる病気は扱っていない、本当に重度の病気を持つ人しか来ないような病気を担当する病院。

彼女は305室の中にいた。

1人には大きすぎる個人部屋。

柳はこちらに気づくと目を見開いて驚いた。

305室は特殊な病気患者が医者に見捨てられたものが最後に行き着くところらしい。

僕はとりあえずなんの病気か聞いた。

彼女は言いそうになかったけど僕はひたすら待った。

彼女が折れて少し恥ずかしそうに言った。

「わたしね、少しずつ宝石になっていくんだって。ほら、左足の爪、凄いカラフルでしょ?右からトパーズ、アメジスト、水晶、パール、ルビーだって。右足はもう太ももまで方先になってるけど奇跡的に関節部分が固まらず使えるようになったからまだ歩けてるんだよ。」

「宝石に…」

健康的な少女は不治の病。

美しい顔になる病気以上に美しい病気。

ついでに見せてもらった右足は青の強い緑で、透明。

彼女が言うには今はほとんど売られていない貴重な宝石、フォスフォフィライトと呼ばれるものらしい。

「私が完全に宝石になったら、多分この体は売られるとおもう。この中には萌えることが出来ない石もあるらしいから。あ、あとねこのことみんなには内緒にしてほしいんだ。明日は学校行くけど、いつも通り接してほしい」

「…柳さんが困った時は俺に頼って。」

そう言って別れた。

帰り際に彼女の母親にあった。

嬉しそうで悲しい顔をしていた。

彼女の右足の宝石について教えて貰った。

とても割れやすく少し蹴ったりするだけで折れてしまうらしい。今日の休みの理由はその割れた足を治すためだったらしい。

彼女の余命も教えてもらった。

余命は3ヶ月だと言われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る