女子3人と魔王のために魔王討伐
頭野 融
第1話 1日目①
―キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。ここは
「ねぇ、夏休みどこか行く予定ある?」と椎名さん。
「ちょっと家族と県外に旅行に。」と三谷さん。
「塾があるから、どこも行けないー。どうにかして。」と御紋さん。そうだった。大きな声なのは御紋さんだけだった。
「じゃあ、行きたいとこある?初ちゃん。」なだめるように、椎名さんが訊く。
「うーん、天国。」
「それ死んでる。」と三谷さんが冷静にコメントしている。
「じゃあ、地獄。」御紋さんがすぐに答える。
「ちょっと、天国だめなら地獄って、初ちゃん、ふふっ。」急に椎名さんが笑い出した。
「たしかに。ふふふふふ。」段々、三谷さんがつられてきた。
見かねた、御紋さんが言う。
「もう、じゃあ、魔界に行きたい。」
「え、魔界?」椎名さんと三谷さんの二人がハモって聞き返した。
「あっ、魔界なら、織屋が詳しいよね。織屋~。」突然、御紋さんがこっちを向いて手招きしてくる。席を立つと、三谷さんが椎名さんに織屋くんって魔界に詳しいんだっけ、と訊いている。
「たしか、クラス替えの後の自己紹介で、特技を言うときに、詰まって、そしたら、『悪魔を召喚すればいいじゃん。』って言われて、本当に魔方陣、描いて、呪文を唱えたんだよね。」椎名さんが解説している。その通りだ。そのおかげで新しいクラスでは、ぼっちだけどな、と心の中でツッコむと、もう、御紋さんの席に来ていた。
「で、何。」御紋さんと話せるのが本当はうれしいのだが、無愛想に言う。
「だから、わたしは、魔界に行きたいの。」さっき聞いたけど、すごいことを言ってるなと、自分が思ってる横では、椎名さんと三谷さんが笑っている。
ピタ。
時が止まったなんて表現はもう聞き飽きたけど、本当に時が止まった。そして、僕たち四人がいる床が抜けた。ここは一階だ、床が抜けるなんてことはありえないと思っていると、三人も不思議そうに周りを見渡している。この四人だけ動けているようだ。どんどん、どんどん真下に落下している。緑色の大地が下に見えて来た。ぶつかると思って四人同時に目をつぶると、無事に着地していた。
「死ぬかと思った。何が起きたんだ。」僕がつぶやくと、
「本当だよ、何が起きたの。」椎名さんがつぶやく。
「分かんないけど、面白かった。」三谷さんがのんきに言っている。
「これなんなの。ねぇ、織屋。」と御紋さん。
「分かんない。で、ここはどこ。」答える僕。
「手荒いことをしてしまったな。やはり、私だと魔力が足りなかったな。」
「え、何の話、ですか。ていうか、あなたは誰、ですか。」何とか言葉をつないだ。
「ああ、何から話せばよいであろうか。まず私は、魔王だ。そしてここは魔界。私があなたたちを魔界に召喚したんだ。それで、あなたたちには今から、魔王討伐をしてもらう。人間界が夏休みの時は、魔界に人間が一人も来ないし、暇なんでな。私のためだと思って、引き受けてくれ。ちなみに、人間界の時間は止めといた。私を討伐したら、人間界に戻れるってことだ。心配はしなくてよい。」
「面白そうだから、OK。魔王討伐します。」御紋さんが威勢よく答える。
「えっ。」三人でハモったが、魔王がもう話を進めている。
「では、今から、自分のジョブを決めてもらう。」
「えーと。」選び始める御紋さん。なんだか、いきなりで話が飲み込めないが、御紋さんが楽しそうで何よりだ。
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