類は友を呼ぶ? ~俺、七本の剣で戦います~

夜神

第1章 ~類は友を呼び、真友への礎となる~

第1話 「中二病が抜けない少女」

 俺――南雲なぐも零次れいじは戸惑っている。

 今日は休日で通っている高校は休みであり、特に予定もなかった俺は週刊誌でも買おうと外に出ていた。知人に出会うこともなかった俺は目的の物を買うとすぐさま帰宅。両親は仕事でいないので迷うことなく自室に向かった。

 自室の部屋を開けると……そこには眼帯を付けた少女が立っていた。しかもアニメで見たような妙に格好つけたポーズで。


「おかえり零次くん。待っていたよ」


 ポーズを変えながら話しかけてきたこの人物のことを俺は知らない。

 と言えたなら良かったのだろうが、あいにく知っている人間である。

 名前は立石たていし明日葉あすは。中学時代に知り合った女子であり、母方の血筋が外国人ということもあってか人の目を惹く外見をしている。世間で言うところの美少女だ。

 だがしかし、これまでに彼氏が出来たことは一度としてない。何故なら目を怪我しているわけでもないのに眼帯をしている痛い奴だからだ。

 今でこそ中二病チックな服でなく普通の高校生らしい私服、短髪だった髪を伸ばしてセミロングと呼べる長さにしたあたり女子として成長していると言えるが……それでも友人と聞かれたら恥ずかしさを覚える類の知り合いである。

 何で過去の俺はこいつと知り合ってしまったんだろう。明日葉の突拍子のない言動を目撃する度にこう思う自分が居る。


「お前……人の部屋で何やってんの?」

「今言ったじゃないか。君のことを待っていたんだよ」

「俺は何で待っていたのかを聞いてるんだよ」


 あといちいちポーズ変えるな。お前がやると様になって見えるから見てて余計に腹が立つ。


「愚問だな。そんなの明日発売されるVRMMORPG《アナザーマイセルフ・オンライン》を一緒に買いに行く約束をするために決まっているだろう!」


 何が決まってるんですかね。前もってフラグがあったわけじゃないんだから言われないと分からないことだよ。俺はお前の知り合いだけど、お前のこと何でも分かってる変態さんじゃないからね。

 ちなみに今明日葉が言ったアナザーマイセルフ・オンライン、通称《AMO》はこれまで発売されてきたVRMMOをより進化させつつ自由度を上げたと称されている。何でも武器の装備制限が緩いらしく、刀を6本装備しようが槍と斧を同時に持とうが問題ないんだとか。まあ装備した分だけ移動速度などに影響は出るらしいけど。

 どうしてこんなこと知ってるのかって?

 これでも人並みにはゲームしてるし、ゲーム関連の週刊誌だって買ってるからだよ。昔からアウトドアよりインドア派なんでね。

 それ故に……目の前に居るような奴と知り合ってしまったんだろうけど。ある程度話が出来てしまうから……


「あのな明日葉」

「何かな?」

「確かにAMOは買おうと考えていたゲームだ」

「うんうん、そうだろうそうだろう」

「だが……何でお前と一緒に買いに行く必要がある?」


 家が近所とかなら分からんでもないが、俺の記憶が正しければ明日葉の家はそれほど近くはなかったはずだ。徒歩なら30分は掛かりそうなところだし。

 俺としては当然の問いかけをしたのだが、何故か明日葉の表情はみるみる崩れ……先ほどまでの澄ました顔とは一変して驚きと焦りが混じったような顔になる。


「え……だ、だって零次くんも買うんだろ?」

「ああ。予約を済ませてるしな」

「な、なら一緒に買いに行っても問題ないのでは?」

「平日ならともかく明日は休みだろ。生活習慣違うのに一緒に行く意味あるか?」


 うちには通いたい学校があるからってホームステイしてる従妹だっているんだし。部活やってるのに朝弱いからいつも俺が起こしてやってるんだからな。起こさないと怒る奴だし、お前ほど夜更かしとか出来るわけじゃないんだぞ。

 まあ……単純にこいつと一緒に出掛けて変な注目浴びるのが嫌ってのもあるけど。こいつ見た目は良いから人目惹くし、それでいて痛い言動したりするから更に注目されるだろうし。一緒に行動しても問題なさそうなのはアニメやゲームのイベントやってるところくらいだ。そのへんなら似たような人種も居るだろうから。


「い、意味って……私と零次くんは友達だろ?」

「……まあ」

「今の微妙な間は何なのかな! それを抜きにしてもどうして否定的な言葉しか出てこないんだ。私と一緒に出掛けるのは嫌だとでも言うのか!」

「どちらかといえば嫌だよ」


 だってメリットよりもデメリットの方が多いもん。

 お前に振り回されて疲れる可能性あるし、黙ってればはたからは美少女に見られるわけだから嫉妬の視線が俺に来るし。

 可愛い子と一緒に出掛けられるんだから良いだろって? いやいや、休日くらい平穏に過ごしたいよ。ただでさえ学校でもこいつ絡んでくるんだから。こいつと友達になりたい奴が居るなら俺は喜んで仲介するよ。


「即答……友達と思っていたのは私だけだったのか? 仲良しだと思っていたのは私だけだったとでも言うのか? ……答えろ零次、私は君の何なんだ!」

「外でもそういうことしそうだから一緒に出掛けたくないんだよ」

「うぐっ!? ……き、君はどれだけ私のアイデンティティを潰せば気が済むんだ。君が言うから服装だって変えたし、髪だって伸ばしたというのに。言動くらい目を瞑ってくれてもいいじゃないか!」

「娘ももう高校生だし……もう少しまともになってくれると嬉しいんだけどね。零次くんどうにかならないかしら? ってお前の母親に言われた俺の気持ち分かる?」

「だって……だってこういうキャラじゃないと人と話せないんだもん! それにAMO予約してるお店は昔から通ってるところだし、普通だった頃の私も知ってるわけで。ひとりじゃ恥ずかしくて行きにくいんだもん……!」


 だったら普通のお前に戻れよ!

 見た目は良いんだからお前から話しかけなくても誰か話しかけてくれるから。俺以外にもお前に付き合ってくれる人増えるだろうし、俺の負担も減りそうだからお互いに良いこと尽くしですよ。


「レイ兄、あたし下に行くからお茶でも持ってこようか? うわぁ……女の子泣かせるとかレイ兄最低」

「おい小娘、こいつが勝手に自爆して泣き始めたのに俺を最低呼ばわりするな。お前もこいつが痛い人種なのは知ってるだろうが」

「まあ何度か会ってるから知ってるけど……というか、人のこと小娘とか言わないでくれるかな。確かにレイ兄と比べると小さいけど、これでも人並みにはあるんだから!」


 まあ160センチ近くはあるもんね。スリーサイズも人並みには育ってるし。

 紹介が遅れたけど、この少女の名前は京華(けいか)。先ほど言ったと思うがうちに居候している従妹である。現在中学3年生で俺のにふたつ下だ。名前だけ言ったので分かるだろうが、苗字に関しては俺と同じである。

 そんなことを考えている間に京華は勢い良く扉を閉めて下に向かった。機嫌を損ねた恐れがあるのでお茶を持ってくるかは分からないが……まあ明日葉に長居されるのは疲れるのは持ってこなくても良しとしよう。


「可愛い従妹とひとつ屋根の下に暮らしているとは……君はラノベの主人公か!」

「美少女で眼帯付けてるお前の方がラノベに居そうだけどな。それとさっきの話だけど、要約するとひとりで買いに行くのは恥ずかしいから付き添いお願い……ってことでオーケイ?」

「直球で言うのは恥ずかしいからやめてくれないか……というか、君は一緒に行ってくれないんだろう?」

「そういう拗ねた顔するのはやめてくれないか」


 お前みたいな美少女がやるとこっちに非がなくても悪いことしてる気分になってくるし、京華に見られたりしたら悪者扱いされるから。男女平等っていつになったら適うんだろうね。


「昼からでいいなら一緒に行ってやるから」

「え、本当!?」

「本当だよ。これでへそ曲げられて学校で変な噂されても面倒だし。ただし、常識のない言動は慎めよ」

「ふっ、任せておきたまえ! 私は契約を破る愚者ではないよ」


 言ってる傍から慎めてないじゃん。

 何で俺ってこいつと一緒に居るんだろうね。類は友を呼ぶ? ははは……俺がこいつと同類のわけないでしょうよ。確かに色々妄想した時期はあるし、今もするときはあるけどね。でも人前で堂々とこいつみたいな言動はしないから。


「レイ兄、お茶持ってきたよ~」

「……持ってきたのか?」

「だって一応お客様だし、家に上げたのあたしだから。それにあたしは出来る従妹なので」

「自分で出来るとか言っちゃいますか……」

「そのへんを突くのはやめて。ノリで言っただけだから……それと、はいこれ」

「……この金は?」

「明日AMO買いに行くんでしょ? 明日あたし部活あるからついでにあたしの分も買ってきといて」


 人使いの荒い従妹だな……まあついでだからいいけども。金もちゃんと渡してきたし


「それじゃ、あとはごゆっくり。ただしエッチなのは勘弁してね。隣だから絶対聞こえるから」

「しないから安心しろ。それにこのお茶飲ませたらさっさと帰す」

「うん、目的は果たせたからいいんだけど……それでもこれだけは言っていいかな。零次くんは私の扱いひどくない?」

「普通の女の子になってくれたら改善するよ?」

「あはは……このままでいいです」

「レイ兄達って仲良いのか悪いのかよく分かんないよね」


 でしょうね。俺もよく分かってないところだから。

 そんなことよりお前はさっさとここから出ていきなさい。お前がこいつの影響受けたりなんかしたら叔父さん達に申し訳ないから。


「まあいいや……じゃあレイ兄、明日よろしく~」

「はいはい」

「零次くんは尻に敷かれるタイプのようだね」

「機嫌を損ねても良いことないんでね。そんなことよりお前はさっさと帰れよ」

「だから私の扱いひどくない!? せめてお茶を飲み終わるまで待ってくれないかな!」

「仕方ないな……じゃあ俺、下に行ってるから」

「相手するのは適当でもいいからせめて一緒の空間に居てよ! 寂しいし気まずいじゃん!」



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